クライミングウォールを登っている時、その壁をどのようにとらえて、どんなイメージで登っていますか? 壁と正面から向き合って見上げるように上へ上へのイメージで登っているという方が多いのではないでしょうか?
私も以前はそのような感覚で登っていましたが、難しい課題にトライしていると、小さくて掛かりの悪いホールドに対応する場面が増えます。そうなると、壁にかなり接近した位置で登り続けることになるため、壁を見る視点が変わります。いつの間にか壁を横向きにとらえて登る感覚に変っていました。そして、この登り方にはたくさんのメリットがあることに気が付きました。
この記事では、壁を横向きにとらえて登ることで得られるメリットについて書いていきます。
ライター:諦めない男 つるぎ
壁を横向きにとらえて登るメリット
結論から書きます。
壁を横向きにとらえて登ることで、6つのメリットがあると思っています。
- 壁の斜度を緩和することができる
- 腕や手の負担が少なくなる
- 身体張力を活用しやすい
- ホールドを最も効く角度から保持できる
- 推進力を活かしやすい
- キネティックチェーンを活かして登りやすい
これらのメリットにより、身体能力を発揮しながら、省エネで登っていくことができます。
それぞれの内容について解説していきます。
壁の斜度を緩和することができる
ほとんどの場合、クライミングウォールは突起物がホールドとして設置されています。壁に密着した状態で横から見ると、ホールドが不規則に並ぶ階段のように見えませんか?
写真左、パターンAのように登れば距離が長くなりますが、斜度は緩やかになります。写真右、パターンBのように登れば距離は短いですが、斜度が急になります。
パターンAのイメージで実際に登っていると、楽に登るための選択肢が増えることに気が付くと思います。
腕や手の負担が少なくなる
壁を横から見て登ることは、壁に接近した状態で登ることになります。特に重心が壁に近い位置を維持できれば、自ずとスタンスに体重が乗った状態になりますので、壁から剥がれないように支えている腕や手の負担は小さくなります。壁を正面からとらえて正対で登り続けた場合と比較すると、かなりの省エネにつながります。
また、ハイステップで乗り込むために高い位置に右足を上げる場面では、左足に重心を移しながら、腰の左側面を壁に向けて密着するぐらいの位置で背中を丸めて懐にスペースを作ります。この時、壁から離れる方向へ膨らむのはNGです。壁から離れる方向へふくらむと手や腕への負担が大きくなります。
このように、出来るだけ横向きで、壁から重心が離れないようにムーブを起こしていくことで腕や手の負担は少なくなります。
身体張力を活用しやすい
壁に近い位置で登ることになるので、身体張力を活用しやすくなります。ホールディングのし直しや、手を少しだけでもシェイクしたい場面など、身体張力が使えることで、そのわずかな時間を稼ぐことが出来るようになります。一見地味な動きですが、微調整や小レストする余裕が生まれる事は、大きなプラスだと感じています。
また、親指をホールドの内側面に当てておくことも非常に有効です。壁に近い位置で、親指はホールドの内側から外側に向かって押すように保持し、スタンスはホールドに乗る、突っ張ることで身体張力が利用しやすい状況が作れます。
ホールドを最も効く角度から保持できる
壁に張り付いた状態からホールドに手を出すため、最も利かせられる角度からホールドを保持することができます。保持しようとしているホールドが悪ければ悪いほど、その効果は実感できると思います。
推進力を活かしやすい
壁を横向きにとらえて登る時、真上に登る場合でも、左足から右足、右足から左足、というように重心をシフトしながら登っていきます。その際、重心を逆の足にシフトする流れで発生する推進力を最大限活用します。
横の力を弧を描くように上の力に変えたり、上へ一度上がった力を脱力で下へ落として、その反動で再度上へ向かう推進力に変えたりします。また、スタンスが小刻みに設定されている場合は、真っすぐ上へ登る場合でも、左右の重心移動に自らでブレーキをかけないように、振り子の推進力と連続した反動を使って円滑に登っていきます。
停止状態からの動きだしでは、進む方向と逆サイドへ重心を振って、その反動を利用して推進力を作ります。その際のポイントは、壁から重心(腰)を出来るだけ離さない事、進行方向と逆の方向へ振った反動で作った推進力を、上方向の推進力にスムーズに変える事、推進力の大半は下半身、特に股関節からの力で作り出す事などです。
この時、重要なのはスタンスの位置です。主に体感と下半身を連動させて、推進力を生み出せるスタンス位置を両足がとらえていることが大前提となります。
キネティックチェーンを活かして登りやすい
壁を横向きにとらえて登ると、ホールドを真下にだけ利かせて登ることはほとんどなくなります。真上に登っていく場合であっても右下か左下、どちらかの重心方向(へそ方向)に向かって支持手を利かせてムーブを起こすなど、キネティックチェーンを活かした登りがしやすくなります。
まとめ
壁を横向きにとらえて登ることで得られるメリットは下記の6つです。
- 壁の斜度を大幅に緩和することができる
- 腕や手の負担が少なくなる
- 身体張力を活用しやすい
- ホールドを最も利く角度から保持できる
- 推進力を活かしやすい
- キネティックチェーンを活かして登りやすい
ダイアゴナルや測体といったワードで、部分的に横を向くムーブはよく紹介されていますが、あるポイントのムーブだけ楽にこなせても、ルート全体を通して見るとしっくりこないと感じる箇所が大半で、どうすれば全体的に省エネムーブで登っていけるのかと私も悩んでいた時期がありました。
壁を横向きにとらえて登ることはその答えの1つになると思います。コツをつかむまでは少し時間がかかるかもしれませんが、慣れてくればかなり楽に登れる感覚を持てると思いますので意識して取り組んでもらえればと思います。
また、キネティックチェーンについての詳しい内容は下記8つの記事で書きました。
下記はそのまとめ記事になります。こちらも興味があればご覧ください。
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