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止まって再び動き出すクライミングのロスを最小限にする意識

限界グレード付近のルートを登っていると、悪いホールドや悪い体勢でムーブを起こす場面が出てきます。このような状況では、判断を間違えると大きなダメージを受けたり、最悪の場合フォールしてしまうので慎重に通過しようとする意識が働きます。

しかし、慎重さが裏目に出て、動きが硬いムーブになってしまったり、うまくいかないと感じて、動きが止まってしまうこともよくあります。それは、自分で課題を難しくしてしまっていることになります。

また、1手ごとにバランスを取って止まる登り方が癖になっているクライマーの方は、止まる・再び動き出すを繰り返すことで大きなエネルギーロスが起こっています。推進力を止めること、0から推進力を作ることは、厳しいセクションを登っている場面では大きな足かせとなります。

この記事では、難度の高いセクションや長年の登り方の癖などで、動きを止めることが完登に向けて大きなロスになっていることを認識すること、そして、そのロスを最小限に抑えるために私が具体的にどんなことを意識して登っているかについて書いていきます。

ライター:諦めない男 つるぎ

結論

例 1 )
取ったホールドの保持に合わせて、止まってバランスを取るためにスタンスを決めた後、次取りにいくホールドに向けてムーブを起こす。

例 2 )
核心部などを通過する際に、ムーブの途中で一旦止まって一息ついた後、ムーブ動作を続ける。

上記の例のように、動きを止めたり、止まった状態から再び動きだすためにエネルギーを使うことは、本来そのルートを効率よく登るために不要なエネルギーです。しかも、これらでロスするエネルギーは、自分が感じているよりも完登に向けて大きなマイナスとなっています。

止まって再び動き出すロスを減らすためには下記が重要だと思っています。

  • 止まる回数を減らす事
  • 重心の移動速度を落とさない事
  • 止まった後、ムーブを起こすための予備動作を入れる事

それぞれ解説していきます。

止まる回数を減らす事

結論の 例 1 ) については、初心者のころに1手づつバランスを取るように教わって、その延長線上で続けてきた結果、無意識に行っている動作かもしれません。

結論の 例 2 ) については、耐える時間の長い辛いムーブの途中に、止まれるバランスがあると、止まって一息つきたくなると思います。その場所で止まっている時、動き出す時、それぞれで大きなロスがない場合はまだ良いのですが、止まってバランスを維持することで、体幹をかなり消耗してしまうとか、再度動きだす時に想像以上に筋力を使っているというケースもあります。

大前提として知っておきたい事として、

  • 筋肉の収縮力は、止まってしまうとその力が半減してしまう
  • 重心の動きが止まってしまうと、次の動き出しが大変になる状況がある

詳しく解説していきます。

筋肉の収縮力は、止まってしまうとその力が半減してしまう

筋肉はよくゴムに例えられます。勢いよく引っ張って離せば、ゴムは勢いよく収縮します。ゆっくり引っ張って離せば、勢いは弱くなります。引っ張った後、しばらくその状態を保持してから離すと更に縮む勢いは弱くなります。

この原理をムーブで使う筋肉に当てはめて考えると、腕を一度勢いよく伸ばしてから引き付ければ、引き付ける勢いが強くなります。深く重心を落とすために膝を曲げた後、すぐに立ち上がれば、関連する筋肉の収縮・伸長力を有効に利用して立ち上がることができます。

このように動きを止めないことで、筋肉の収縮・伸長力を活かした登りが出来るようになります。

重心の動きが止まってしまうと、次の動き出しが大変になる状況がある

例えば、歩いてる状況を想像してみてください。2歩進んで止まる、2歩進んで止まる、これを繰り返すのと、止まらずに歩き続けることのどちらかが楽か、体に負担がかからないかは、やるまでもないと思います。歩くような簡単な動作でも、止まる動作を挟むことで、無駄なエネルギーを使っていることが実感できます。

また、止まるタイミングも両足が地面にバランス良く着いている状態が一番良いと感覚的にわかると思います。足を上げて踏み出す瞬間などで止めようとすると、その状態を維持するためにいろんな筋肉を動員してバランスを保って止まることになり、無駄なエネルギーを使ってしまいます。

これらがクライミングの最中に起こっています。難しいムーブであれば尚更、重心が移動しているその力を有効に使って突破する作戦を立てることは非常に重要になってきます。動きがあるから利かせられるホールド、動きがあるからバランスが取れるケースは多々あります。

また、止まった後、動き出す動作についても、先ほどの例のように、バランスを頑張らないと取れない状態では、無駄な力を使ってしまったり、筋肉の特性を有効に使えない状況になってしまいます。ムーブの途中で、止まった後、その状態から動けなくなったという経験をした方も多いのではないでしょうか?

動きを止めるということにはこのようなリスクがあることを前提にムーブを考える必要があります。

重心の移動速度を落とさない事

持てると信じてムーブを起こすことが大事だとよく言われますが、特にオンサイトの際には重要だと思っています。少々ロスのあるムーブであっても、イメージしたムーブに集中して、十分な勢いを維持して思い切ってムーブを起こす事で大きな力が発揮できます。

この時、重心を移動する速度が遅すぎると、それが原因でバランスが取り辛く、難しいムーブになってしまうことも多々あります。恐怖心や警戒心から慎重なムーブになって、動きが極端に遅く・硬くなることもよくありますが、それらは登りに大きなマイナスの影響を与えていることを理解しておくことも大事です。

出来るだけ重心の移動速度を落とさないようにムーブを起こすこと、その積み重ねが完登できるかを左右すると言っても過言ではありません。

止まった後、ムーブを起こすための予備動作を入れる事

リードでクリップする際や、進方向が真逆へ行くなどの状況では、どうしても止まらないといけない場面が出てきます。その場合、止まった状態から進みたい方向へ動くのではなく、進みたい方向と逆の方向へ一度重心(腰)を移動させる予備動作を入れるようにします。その反動を利用して進みたい方向へムーブを起こせば、より遠くへ、楽に距離が出せるようになります。

次に取りたいホールドが、手を伸ばせばすぐ届く状況であればロスはありませんが、保持しているホールドを筋力で操作しないと届かないのであれば、この方法は非常に効果的です。

重心(腰)を進行方向とは逆へ振ることが難しい状況であれば、左右の足の間で重心移動をするだけでも、小さな推進力を作ることができます。特にギリギリの状況の場合、この小さな推進力が非常に大きな効果を発揮します。

まとめ

登っている途中で止まること、再び動き出すことは、状況によって、かなり大きなロスになっています。実際に登っている時は、課題やその強度にばかり意識が向いて気付きにくいですが、止まること、再び動きだすことで馬鹿にできないロスが発生していることを認識することが大事です。

登る時のムーブを組み立てる際には、上記のことを念頭に置いて、どこで止まるのか? どこで止まるとマズイのか?をオブザベーションやムーブを考える際の要素に取り入れることで、完登に大きく近づけるはずです。

止まって再び動き出すロスを減らすために重要なことは次の3つです。

  • 止まる回数を減らす事
  • 重心の移動速度を落とさない事
  • 止まった後、ムーブを起こすための予備動作を入れる事

これらを登る際の習慣にしていけば、クライミング力は向上します。

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