クライミングをしている時、持久力が人より劣っていると感じることがよくありました。どうすれば持久力を上げられるのか上級者に質問すると、返ってくる答えは「たくさん登り込んだら持久力はついてくる」でした。それも正解の1つだとは思いますが、今はそれだけでは不十分だと思っています。
ある時、自転車のYouTubeチャンネルで大きくて持久力のある筋肉を複数連動させることで格段に持久力が上がるという動画を見ました。クライミングでもこの考え方・身体の使い方が重要なのだと気付きました。
大きな筋肉を連動できず、持久力がない小さな筋肉をメインで使っていると、早く限界が来てしまい、その結果、自分には持久力が無いと思い込んでしまっていました。
例えば、手でホールドを保持・操作する場合、肩甲骨や鎖骨から動かす意識で腕を操作することで、背中・胸→肩→腕→手というように一連の筋肉を使うことができます。そして、背中や胸の筋肉から手までを連動させたクライミングをするためには、そのための姿勢が取れている必要があります。
身体の使い方を変える必要があったので、効果が実感できるまで1年以上掛かりましたが、複数の筋肉を連動して登れている感覚が持てるようになってくると、その感覚に比例して持久力や保持力が向上していきました。
この記事では、登る力を最大限発揮するための姿勢で、私が意識して取り組んできたことをまとめて書いていきます。故障リスクの低減、成長速度の向上にも繋がる超重要な内容だと思っています。
ライター:諦めない男 つるぎ
目指すべき姿勢について
登るルートや課題の強度が高ければそれに比例して身体が受けるダメージは大きくなります。身体能力を発揮できる姿勢でより多くの筋肉を動員することができれば、クライミングで受けるダメージも、多くの筋肉や関節で分散できるため、部位毎のダメージは小さくで済み、早く回復するようになります。
1回のトライだけで見ても効果は大きいですが、長期スパンで継続してトレーニングを続けていくことを考えると、疲労の蓄積が大幅に減るわけですから、故障のリスクも下がり、たくさん登ることができるので成長速度も上がることが見込めます。
解決できない核心部や課題でムーブを考えたり見直す際は、その時の姿勢も確認・修正が必要です。
身体が力を発揮する3つの要点
姿勢を正す際に、「胸を張れ」とか「頭のてっぺんから出ている糸で天から吊るされているイメージをしろ」とか言われた経験をお持ちの方も多いと思いますが目的は同じです。
目指すべき姿勢の3つの要点
- 耳が肩の上にある状態
- 胸が開いている状態
- 骨盤が立っている状態
※ 反り過ぎもNGです。
特に限界グレード以上をトライしていると、姿勢を維持することが困難になり、崩れた体制でムーブを起こしてしまい勝ちです。そのことに気づかず何度も繰り返し練習していると、局所的に疲労がたまって指や肩、腰痛の原因となります。
そもそも、ルートの核心部やボルダリングの難課題は体勢が崩れるように設定されています。姿勢がどうしても維持できないケースもあると思いますが、その場合はやり過ぎないことが重要です。
何度もトライしてパフォーマンスが落ちてきたり、違和感を感じたらすぐやめる!この英断も忘れないでください。一瞬の判断ミスが長期間クライミングできない状況にしてしまうことはよくある話です。
それから、どうしても姿勢が取りにくい・継続できないと感じる場合は、体の柔軟性を取り戻すことが先決です。 マッサージや治療が必要なケースもありますので、整体や整骨院などに相談してみるのも良いかもしれません。
自力でなんとかしたい方は、世界最大の動画共有サービスYouTubeに本職の方が発信している、猫背・巻肩・ストレートネック・首痛・腰痛などの改善動画がたくさんアップされています。私もそれで改善したり緩和した経験があります。いろいろなケースがありますので、複数の動画を見て自分の症状に合うものを探してみると良いと思います。
1, 耳が肩の上にある状態
左の写真で、積み上げた石が背骨で、一番上の石が頭だと想像してみてください。バランスが取れて静止しています。
この状態を維持するために必要な力はゼロです。一番上の石がほんの少し前にでればバランスは崩れ、耐える力を持たない石の塔は簡単に崩れてしまいます。
人間の場合、首が前に出ていると崩れたバランスを補うために、首周りの筋肉が力を出して耐えることになります。体全体のバランスも変化し、前に傾こうとする力が働きます。
地上でしっかりと立っている状況であれば踏ん張る対応を無意識のうちに取ってしまうので意識すらすることはありませんが、クライミング中、バランスが悪い状況や、力を出し切って限界ギリギリの状況であれば、フォールする原因になってなってしまいます。
また、頭の重さははボウリングの玉によく例えられます。それほど重いものがてっぺんにあるということです。バランスが取れていないと、そのバランスの悪さを首周りの筋肉が耐えてカバーすることになります。
結果、首周りの筋肉が常に緊張している状態が続いて、現代病と言われている猫背やストレートネックになっていき、クライミング力が低下する姿勢が常態化していってしまいます。
頭の位置によって、その下にある体のパーツがバランスを取ることになりますので、姿勢改善の第一歩は頭の位置ということになります。自分の内感だけで感じることは難しく自覚し辛いので、鏡などを見る時にあごが前にでていないかなど確認して、普段から意識して修正していくと良いと思います。私もかなり意識して生活しています。
2, 胸が開いている状態
胸が開いていない姿勢では呼吸が浅くなり、十分な酸素が体内に供給できなくなります。
また、肩が前に出た猫背の状態だと肩甲骨が開いた状態になってしまい背中の筋肉や胸の筋肉が連動して使えず、結果、大きな力や持久力が発揮できない状態になります。
この姿勢で高い強度のムーブを繰り返すと、肩や人指し指、中指に疲労が溜まりやすくなりますので注意が必要です。
猫背が状態化している方は、左の写真の赤ラインの部分が縮んで硬くなっていることで、肩が前に引っ張られて猫背になっているケースが多いので、写真左のようにもみほぐしを試してみてください。硬くなっている場合は結構痛いです。
3, 骨盤が立っている状態
骨盤が寝た状態でクライミングすると、腰にかかる負担は大きくなります。荷物を持ち上げる際、腰の屈曲で動作を行うことが常態化している人をよく見かけますがそれは間違いです。
股関節と膝を曲げながら(腰は曲げずに)腰を落として、大きな筋肉がたくさん集まっている下半身の立ち上がる力を使って持ち上げないと腰を痛めるという話はよく聞きますが、それと同じ理屈です。上半身と下半身の基本的な折り曲げ位置は股関節です。
骨盤が寝た状態だと、バランス的な問題も起こってきます。骨盤を寝かすと、重心が後ろへ移ります(壁から離れていく方向)。骨盤が立っていれば足に大半の体重が乗る場面で、骨盤が寝ているために手や腕の力を使って上半身で支える割合が大きくなってしまう事になります。
イメージがわかない人は次の方法で確認してみてください。足を肩幅に開いて、ここで紹介した3つの要点を押さえた姿勢で直立した場合、足裏にかかる重心は両足の母指球の辺りにかかることが確認できます。それが確認できたら足幅はそのままに、次は反対に腰や背中を丸めて立ってみます。そうすると、体重が踵に移っていくことがわかると思います。
クライミングは基本的につま先側で登りますので、重心が踵側に移ることで、スタンスに体重を乗せきれない、フリクションも悪くなってスタンスが滑りやすいなどの悪影響に繋がります。
股関節で曲げる
①~⑤は股関節を曲げた座り方の見本となるイメージです。腰に優しく大きな力が発揮できる身体の使い方になります。⑥と⑦は腰を曲げて座ってしまっているNG例です。私も気が付くと⑥になってることがあるので、慌てて正しています。
股関節で曲げる動作がしっくりこない人に注目してもらいたいのは②です。ポイントは股関節を曲げると同時に膝も曲げるという事です。体が柔らかい人は出来ますが、ほとんどの人は、膝が伸びきった状態で股関節を曲げようとしても硬くて曲がらないと思います。
その場合は、②のように股関節を曲げることと、膝を少し曲げることはセット動作として習慣化してみてください。また、例①~⑤の手順で座ると、慣れないうちはかなりの違和感を感じると思います。感覚と実態のイメージを合わせるために鏡で角度を確認するなども良いと思います。身に付けることができればクライミング以外のことにも役立つ内容だと思いますので、是非取り組んでみてください。
4, ストレッチポールで姿勢の感覚をつかむ
目指すべき姿勢の基準が解りにくく、私自身、感覚がつかめない時期が長らくありました。特に骨盤を立たせる際の角度の感覚がつかめず、整体の先生に相談したところ、ストレッチポールに頭から尾骶骨が乗るように仰向けに寝て、腰とストレッチポールの間に隙間がない姿勢を体で覚えると良いとのことだったので即アマゾンで購入して実践しました。
私の場合、まっすぐになっていると思っていた姿勢は、反り過ぎていることが解りました。(ストレッチポールと腰の間に隙間がありました)それ以降、クライミングの後や寝る前などに利用して、姿勢の感覚をつかんでいきました。
また、ストレッチポールを使うようになった事で、これまでおろそかにしていた体の背中側のメンテナンスも出来るようになり、1日1回(10~15分程度)は姿勢をリセットするため、背骨、腰から背中まわり、首、ハムストリングスなどの部分をメンテナンスする良い習慣が身につきました。
購入される場合はお尻から肩まで乗るように、必ず90cm以上のものを選んでください。
私はコスパ重視で購入して使っています。他に、値段は少しはりますが人気のLPNストレッチポールはジムなどでも採用されているようです。あと、安定感のあるハーフ型も最近は人気があるようです。参考までに一通りリンク張っておきます。
まとめ
・大きな筋肉を複数連動して使う意識が大切
・筋肉の連動ができれば、保持力・持久力・回復力・怪我リスク低減・成長速度アップに繋がる
・手を使う際は、肩甲骨と鎖骨から動かして作する
・身体の力を発揮するには姿勢が重要
・姿勢のポイントは耳・胸・骨盤の3か所
・姿勢がとれない場合は治療やマッサージをするなど原因を取り除く
・座ったり、物を持ち上げたりする動作の際は股関節を屈曲する
・股関節を曲げる時のポイントは膝も同時に曲げること
・目指すべき姿勢の感覚はストレッチポールでつかむ
リードクライミングやボルダリングの活動を継続していく中で、土台となるとても重要な内容です。私自身気を抜くと元に戻ってしまう事もありますので、意識を継続して取り組んでいるところです。
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