心肺機能を強化することができれば、クライマーとしてのポテンシャルはそれに比例して向上します。それまでの肉体の限界ラインを超えて成長が出来るようになります。私はこう言い切れる体験をしました。
それまで有酸素運動は苦手意識があったのですが、ロードバイクでのサブトレーニングに取り組みました。週末はクライミング活動があるので、取り組む時間は通勤時間がメインでした。私が心配機能を強化した方法や、その重要性については下記の記事で書いていますので、興味のある方はご覧ください。
心肺機能が強化されると、それまで筋肉を限界まで追い込んでいると感じていた事が、勘違いだったことに気付かされます。科学的に言うと、より多くの血液を循環させて筋肉に酸素を供給し続ける機能や、疲労物質の乳酸を分解する機能が運動強度に対応出来なかった事が原因だったようです。
心肺機能の向上は、安静時心拍数の変化で解ります。心肺強化に成功後、クライミング活動を続けていると持久力や回復力がそれまで以上に伸びるのを体験出来ると思います。基本的には良いことばかりなのですが、更に成長を目指して活動を続けていく中で、困ったことも出てきました。
この記事では、心肺強化に成功した後、クライミング活動を続けていく上で困ったことと、それに私が対応した内容を書いていきます。
ライター:諦めない男 つるぎ
結論
心肺強化に成功後、困ったことは下記の3つです。
- 練習を止めるタイミングがわからない事
- レスト日の空け方がわからない事
- 故障するまでトレーニングできてしまう事
以前であれば、登り込んで、出し切るまで練習しても、間違った体の使い方をしていなければ、故障することはほとんどありませんでした。レスト日も体の状態を感覚的に判断して、何日空けるかを決めていました。心肺強化に成功してから、この辺の状況や感覚が変わっていきました。
これまでの経験がまったく通じないので、判断基準がつかめず困っていましたが、その対応として、状況を見極めて活動基準を新たに設定しました。
- 明らかに過去最高のパフォーマンスが出来た日は、それでトレーニングは終了する
- トレーニング強度やレスト日など、活動計画変更後は、最低でも2ヶ月間、問題ないかを確認する
それぞれ詳しく書いていきます。
心肺強化後、私が困ったこと3選
練習を止めるタイミングがわからない事
心肺強化前は、出し切った後、粘ったり頑張ったり出来なかったので、このへんで終了としていましたが、心肺強化後トレーニングを続けて行くと、出し切った後もレストで粘って完登できたり、予想以上に力が出たりして、以前と比べて頑張れてしまう事が増えていきました。
これだけを切り取ると良いことのように思いますが、こんなトレーニングを繰り返していくと、ヤバ目の疲労感がずっと抜けない、ても登れてしまう、これまでの経験にない状態が続くようになりました。
レスト日の空け方がわからない事
心肺強化前であれば、レスト日が少ないと、疲労が溜まって故障に繋がりそうな痛みがでた場合、これまでと同じペースで活動を続けると、回復が追いつかず状態が悪化していくのが普通でした。
しかし、心肺強化後は、感覚的には回復して、なんとか登れると感じるので、ペースを落とさず活動できてしまう状況が続きました。
ただ、完全に治るわけではなく、故障ラインギリギリを行ったり来たりしてるような感じなので、このままいくと大ごとになりそうな予感がして、なんとも嫌な感じでした。
故障するまで練習できてしまう事
上記のような活動を継続していくと、ヘルニアになった時に感じた疲労感や痛みが出始め、腰痛の深刻な症状が見られるようになってきました。
それでも、普段通り動けそうなところまで数日で回復してしまう感覚があるのですが、これはさすがに危険領域に入っていると判断してしばらく安静に過ごしました。
これまでの状況から、心肺機能が向上すると肉体の限界を超えるところまで動かせてしまうんだと結論付けました。調子の良い時は特に注意が必要だと感じています。疲労は追い込んだ体の部分に確実に蓄積していて、次にその疲労が溜まった筋肉に大きな負荷がかかった時、故障やそれに近い症状が出はじめる、そんな感覚です。
新たに設定した活動基準
困った状況を自分なりに分析した結果、下記のような活動基準を設定する必要を感じました。以下は私の状況に合わせた活動基準です。それぞれの状況によって対応策は違ってくると思いますので、その前提で読んで頂き、私の結論を一つの例として参考にして頂ければと思います。
明らかに過去を超えるパフォーマンスが出来た日は、それでトレーニングを終了する
人間の体は急に大幅に成長出来ないということを学びました。特に自分の限界グレード以上の課題に対するトライでは、限界を超えたパフォーマンスが発揮出来た場合は、トレーニングとしての登りはそれで終了して、
- 登るとしても1本づつ、楽しく登るだけにする
- レスト時間を十分に取る
- ハングドッグはしない
- 頑張らない、無理はしない
- 強い疲労を感じる場合は登らない
というマイルールを設定しました。
最高のパフォーマンスを発揮した後は、交感神経(戦闘モード)が入りっぱなしになり易いようで、疲労感やダメージの情報がシャットアウトされていると認識しておくのが良いと思います。まずはいったん副交感神経(リラックスモード)を優位にして心身をリラックスすること、体の真の状態を感じられるようにすることが大事だと思います。
トレーニング強度やレスト日など、活動計画を変える場合は、最低でも2ヶ月間程度、問題ないか確認する
回復も早まり、調子よくどんどん登れてしまうと、強度をどんどん上げたり、レスト日を少なくしても大丈夫になったんだと勘違いしてしまいました。疲労はわかりにくく蓄積して、徐々にしんどい状態になり、それが長期間続いていました。
活動日、活動強度、レスト日などの活動計画を変える場合は、少しづつ行い、変更後は最低でも2カ月程度様子をみて、その活動計画が継続できそうか? 体に異常が出ていないか? などの観点から評価し、その時の自分に合った活動計画に微調整していくことが本当に大事だと感じました。
早く成長したい気持ちが強く出てしまうのですが、それは結果的に故障などをしてしまい遠回りになると身をもって体験しました。
まとめ
ここで書いていることはアスリートの世界では当たり前の事だと思います。しかし、クライミングを始めて、技術不足、最低限の筋力不足、慣れなどの問題で登れていなかったクライマーが、クライミングにのめり込んで、登り込み、急成長を遂げて一気に限界グレードを押し上げていく状況と、そのクライマーにとっての真の限界グレードを超える取り組みはまったく別物です。
ここで書いた内容は、真の限界グレードへの取り組みに取ってとても重要な内容だと思います。肉体と心肺機能の関係性を理解して、たくさんの伸びしろがあるにしても、肉体は少しづつしか成長できない事、トレーニング内容もその時の状態に合わせて設定して、強度を上げる場合は少しづつ上げて行くことなどが、継続して成長を続けるためとても重要なことだと思います。
人間の体はとても強く、高い成長性を持っていると言える半面、間違ったトレーニング負荷をかけると成長しない、すぐに壊れるなど、とても弱いとも言えます。なかなかに難しいことですが、この辺の感覚を自分の身体との対話で身に付けながら成長を続ける意識がとても重要だと考えています。自分の身体を使って実験あるのみ!だと思っています。
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