リードクライミングをはじめたばかりの頃は、フォールする事に抵抗がありました。限界がきたら、すぐ壁にロックできるようにハーネスのビレイループに前もってヌンチャクを装着した状態で登っていた時期もありました。
これが習慣になった頃のある時、自分の思っていたのと違う状況になってしまったり、苦しくなってくると、すぐにヌンチャクをカラビナやハンガーにかけてセルフビレイを取ってしまうようになっている自分に気付きました。
これは成長にプラスにならないと思い、その次の登りからビレイループにかけっぱなしにしない事と、すぐにテンションをしないという強い意志を持って取り組むようにしました。
私も含め、ほとんどのクライマーがそうだと思いますが、すぐに逃げやすい状況を作っておくと、頭の片隅には常に逃げ道の選択肢があって、今の登りに集中できません。それでは、全力を出し切ることができませんし、成長するための機会損失にも繋がることだと思います。
この記事では、フォールを恐れず、魂を込めたムーブでのトライを積み上げられない状態がもったいないと思う理由について書いていきます。
ライター:諦めない男 つるぎ
結論
クライミングでの成長が目的の場合、フォールを恐れながらクライミングすることがもったいないと思う理由は次の3つです。
- 逃げ道を準備した登りでは、真の全力は出せない
- フィジカルを伸ばしていくためには、全力の刺激が必要
- リラックスして登れず、本来のパフォーマンスが発揮できない
それぞれ、詳しく書いていきます。
逃げ道を準備した登りでは、真の全力は出せない
トライにせよ、トレーニングにせよ、登る時は自分で限界を決めずに落ちるまで出し切る事が基本になります。ここまでしか登れないだろうとか、あそこは超えられないというイメージに捕らわれてしまうと、もっと登れる力があったとしても、そのポイントで気持ちが切れて、イメージ通り終わってしまう事が多いです。
とはいえ、限界近いところで登っていると、次のムーブの強度が高すぎて今の状態では100%突破できないとか、すでに体が動かないなど、本当に無理な状況もあると思います。その場合は安全第一で判断することが大事です。
行けるかもしれないけど、フォールすると危ない落ち方をする可能性のある状況でも、安全第一の判断を優先させて下さい。(としか言えません) しかし、そのような状況こそ、出し切ってトライすれば成長できる可能性があるのも事実です。
私の場合、ビレイヤーの力量や、このポイントで落ちた時は、安全な位置まで流して欲しいなど、事前の打ち合わせをしておくことで、全力トライの判断をする事があります。リードクライマーが全力の挑戦を続けて成長して行けるのは、心の底から信頼できるビレイヤーのお陰だという点も外せないポイントです。
フィジカルを伸ばしていくためには、全力の刺激が必要
普段からその時々で、全力を出し切るクライミングを続けているクライマーであれば、限界ギリギリの状況になった時に感じるストレスに耐性がついていきます。この耐性を持つことはとても重要で、限界近く追い込まれた時に感じるストレスに耐えることができないと、そもそも全力を出すことが出来ないため、フィジカルの限界突破が難しくなります。
人間の体の適応力は本当に凄いもので、最大筋力や持久力など、フィジカル的な限界の出力を続けていると、少しづつですが向上していきます。逆に限界まで出力しないクライミング活動が続くと、その状況に合わせて落ちていきます。
メンタル面、フィジカル面の両方を維持するためにも、全力で登る、出し切るという意識はクライミング活動をする上で大切です。
リラックスして登れず、本来のパフォーマンスが発揮できない
どんな強いクライマーであっても、ずっと緊張した状態で筋肉を強張らせて登り続けることは出来ません。力を入れる時は入れる、抜くところは抜く、クライミング、特にリードで完登をするためには、このONとOFFの使い分けが出来ることが大前提です。
フォールすることが怖いと思いながら登っているということは、常に緊張して、体のどこかに余分な力を入れている状態だと思います。それでは本来発揮できるはずの力が発揮できない上に、硬い動き、狭い視野で登ることで、危険な目に合うなんてこともあると思います。
私の話をすると、最初はもちろん怖さを感じていました。何度も登って、何度も落ちたり、何度もロワーダウンしたり、自分も何度もビレイしたり、自分以外のクライマーが登り、それをいつもビレイしてくれる方がビレイしている場面を何度も見たり、そんなことを繰り返して、クライミングの危険リスクについてある程度理解できた頃から、怖さは無くなり、登りに集中できるようになっていきました。(今では怖さをほとんど感じなくなったことが、逆に問題だと思っていますが・・・)
あとは、自分が上手だと思うビレイヤーの方にビレイしていただけた事、安全に落とすための技術を教えてもらう機会が多かったこと、その技術を自分でも出来るようになった事、などの影響が安全なスポーツだと思えるようになった理由なんだと思います。
まとめ
フォールを恐れながらクライミングすることがもったいないと思う理由について書いてみました。
- 逃げ道を準備した登りでは、真の全力は出せない
- フィジカルを伸ばしていくためには、全力の刺激が必要
- リラックスして登れず、本来のパフォーマンスが発揮できない
限界グレードを上げていくためには、なんとか克服しておきたい内容です。私自身、テンション癖がつき始めたなーと感じる時もあります。しかし、成長モードに入れる時には、保守的なクライミングから気持ちを切り替えて、思い切ったムーブを起こすことを心がけて取り組むようにしています。
だからと言って、ただ手を出してフォールすれば良いというものでもありません。思い切ったムーブを繰り出す判断をする事と、そのムーブを丁寧に起こす事。例えば、重心移動や、我慢するところはしっかりと我慢する(すぐに飛び出さない)などを注意するようにしています。
それから、怖いという感情については、人によっては勇気を出せば乗り越えらえる内容かもしれませんし、本当に生理的に無理な方も要るんだろうと思います。クライミングでの安全性は、クライマーの登り方・落ち方・状況判断力、使っている道具、ビレイヤーの人柄や技量、事前の打ち合わせなどで、リスクコントロールは可能だと思っています。登りに集中できない要素に思い当たるところがあるのであれば、取り除くことで改善するかもしれません。
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