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推進力でクライミングの省エネムーブを追求する方法

オブザベーションをしてる時や 登っている時に、「どんなムーブで次のホールドを取ろうか」「スタンスの位置はどこが良さそうか」「ホールドはどうやって保持するのが良いか」など、いろいろと考え、瞬時に判断して登っていると思います。その検討項目の中に「推進力の作り方、活かし方」は入っていますか?

1手1手バランスを取った後、勢いを殺してから次のホールドへムーブを起こす登りをしている方が多い印象です。止まるタイミングは必ず出てくると思いますが、止める必要のない場面で、せっかくの推進力を自ら止めてしまい、余計なエネルギーを使っていると感じることはよくあります。

推進力を生かした登りができれば、もっと楽に、スムーズに登れるようになります。また、流れるような登りになるので、楽しさもアップします。

推進力の作り方はケースバイケースですので、この記事では考え方を中心に例を上げながらご紹介できればと思います。普段推進力を活かせていない人が、取り入れることができれば、限界グレードを上げることが出来ると思いますので、参考にして貰えればと思います。

ライター:諦めない男 つるぎ

結 論

結論から書きます。
推進力には大きく2つあります。

登りの流れで発生する推進力
・停止状態から作り出す推進力


この2つを上手く使いこなしながら登ることができれば、大幅な省エネに繋がり、完登の確率を大幅に上げることが出来ます。

まず考えるべきことは、なぜ登りの流れで発生する推進力を止めてしまうのか? ということです。これを理解して、流れを止めないように登る方法を考えたり、勇気の出しどころを知ることが重要です。

停止状態から作り出す推進力については、次のホールドを出来るだけ省エネで取りにいくためのテクニックになります。繰り出すムーブが決まっていて、どの方向に推進力を作ることができれば楽になるのか?その推進力はどうやって作り出すのか? これらを試行錯誤し続けることで、推進力を作り出すセンスとそれを体現できるクライミング力が磨かれます。 

以下で詳しく解説していきます。

登りの流れで発生する推進力

自分がはしごを登っていると想像してみてください。休むことなくどんどん登り続けることができると思います。上へ上へと止まらずに上昇を続けることで推進力が生まれ、軽い感覚で登っていけます。これが登りの流れで発生する推進力です。

逆に、1手ごとに完全に止まりながらはしごを登ってみると、推進力が無くなる分疲れると思います。また、止まるタイミングでも疲れ方が変わります。例えば、両手両足がはしごに着地した状態で止まる場合と、次の段を取りにいく途中の片手片足しか着地してない状態で止まる場合では疲れ方にかなりの差が出ると思います。

このように、最もエネルギーロスが大きくなるのは、登りの中で自然に発生する推進力を、止める必要がないところで止めて、停止状態から動き出すパターンです。

クライミング中最悪なのは、バランスが悪い、ホールドが悪い、スタンスが悪い、強傾斜の核心部などの真っ只中で止まってしまうことです。こんな状況になるとフォールしてしまうケースが多いです。なんとか切り抜けられたとしても、完登に向けて取り返しのつかないダメージを負うことになりかねません。

推進力を止めてしまう原因を自覚する

ではなぜ余計な力を使ってしまう事になるのに自ら止まってしまうのでしょうか?

その理由は以下のようなものがあると思います。

・1手1手バランスを取った後に止まる癖がついている
・強傾斜、壁の形状に慣れていない
・恐怖を感じている
・ホールドが悪く不安がある
・スタンスが悪く信用できない

これらを分類分けすると次の3つに絞られます。

1,クライミング中に止まる癖がついている
2,習熟不足、経験不足で登り方がわからない
3,怖さや不安から本能的な防御反応で止まってしまう

止まってしまう状況への対処法

クライミング中に止まる癖がついているのであれば、止まる必要のない場所で止まらないことを意識して登ることで感覚を変えることができます。

習熟不足、経験不足で登り方がイメージ出来ない場合は、練習して経験を積んでいければ解決できます。

ただ、怖さや不安を感じて動きが悪くなるケースについては、突破の可能性を感じるムーブをいち速く決断して、思い切ってトライするしかないと思っています。

私自身、この課題には常に葛藤があります。その時の心理状態によっては勇気がでない時もありますが、こういう状況を打破することこそクライミングの醍醐味ですし、推進力を止めないように、活かしながらの登りを続けることで、動きながらバランスを取る感覚を養うことにもつながると思います。

停止状態から作り出す推進力

リードクライミングでのヌンチャクへのクリップ動作や、レスト時、登り進めるラインが鋭角方向に変わったポイントなど、一度完全に動きを止めるタイミングは必ずあります。この停止状態から再度動き始めるタイミングで、推進力を作り出して省エネムーブを心がけます。

推進力を作り出す時に利用する要素は次のようなものがあります。

・重力
・筋肉の伸縮力
・反発力
・反動

筋肉の伸縮力とは?

筋肉はゴムチューブのような性質があります。引っ張ると縮もうとする力が溜まります。この性質を利用して推進力を作ります。

例えば、深くしゃがみこんだ場合、太ももの前側の筋肉が引っ張られた状態になるので、膝を伸ばすための力が溜まります。高くジャンプしたい場合に一度しゃがみこむのは、この伸縮力を利用するためです。

反発力とは?

物体が圧縮されたり、引っ張られたりした後に、元に戻ろうとする力です。簡単に言えば、バウンドする力です。

例えば、クライミング中に次のホールドを取りにいく場面、支点となるスタンスに体重をシフトさて次のホールドへ手を伸ばします。この時スタンスホールドとクライミングシューズに圧縮の力が働き、その反発力を利用して次のホールドへの推進力を作ります。ホールドを取りにいく動作では体重を一気にシフトさせるのはこの反発力を利用するためです。

反動とは?

ここでは、1点以上保持していることが前提で、体全体、足、腕、腰、頭などを動かすことによって、その反対側へ向かって生じる力と定義します。

例えば、右方向へランジムーブを行う場合、左方向へ体全体を振って推進力を作ってから発射することで推進力を作ります。ランジの距離を出したい場面でより大きな推進力を得るために反動の力を利用するためです。


これらの要素が掛け合わさって推進力が発揮されます。

例えば、上方向のホールドを取りに行く際は、停止状態からすぐに上へ重心移動を行わず、わずかでも下方向へできるだけ深く重心を落としながら腕を伸ばして、すぐに腕を引きながら立ち上がる動きをします。この動作をすることで、まずは重力を利用して一度下方向へ重心を落とし、その反動と足と腕の筋肉の伸縮力、反発力を利用して推進力に変えるという具合です。

また、重心を落としながら腕を伸ばす動作を速く行えれば、その速度に比例して、膝を伸ばして立ち上がる速度や、腕を肘で曲げて引き付ける速度が上がります。結果、強い推進力に繋がるのでその意識も重要です。

推進力を作り出すことを最も意識するべき状況

保持しているホールドが悪い、スタンスが悪い、バランスが悪い、乳酸が溜まってきて限界が近いなどの状況では気持ちが焦ってしまい、次のホールドに近づくことばかりに意識が集中してしまいます。そして、重心を上げながらゆっくりと次のホールドへ寄っていく動きになり易いです。

こんな状況の時こそ、推進力を作る意識が突破の可能性を高めてくれます。

次のホールドにすぐに近づきたい気持ちを一旦我慢して、逆方向へ重心を移動したり、重心を落とすなど、状況に合わせて推進力を作るための予備動作をして、わずかでも推進力を作ってから次のホールドを取りにいくよう心掛けてみて下さい。

また、落ちる可能性を感じながら次のホールドを取りにいく動作をする時、どうしても体に力が入って、距離が出にくい状態になっています。ガチガチの状態では推進力は作れません。力を入れる必要のない体の部位を脱力するなど、わずかでもリラックスすることが推進力を作る上で重要です。

まとめ

・動いている途中と停止状態、2つ状況下で推進力を活かして登る
・無意識に推進力を止めてめしまう原因を理解する
・恐怖で動きを止めてしまうポイントでは早くムーブを決断して思い切ってトライする
・推進力を活かした登りで、動きながらバランスを取る登り方も身に付ける
・停止状態から動き出す際は必ず推進力を作る
・推進力を作るための原理原則を理解する
・思うようにムーブを起こせない状況でこそ推進力を活かす意識が重要
・恐怖や緊張感からリキんだ状態では推進力は作れない
・クライミングパフォーマンスの発揮には、リラックスすることも重要

停止状態から動き出す際、推進力を活かした登りができるようになれば、これまで届かなかったホールドに手が届くようになると思います。この記事を参考に、登りの幅を広げてもらえれば嬉しいです。

 

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