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クライミングで【腕を伸ばす】が有効ではない場面

クライミングを始めて間もない頃、腕を伸ばして、腕に負担のかからないように登ることを教えられました。やさしいルートや余裕のある時はできますが、核心など余裕がなくなるパートではまったくできない感覚を持ち続けて登ってきました。

また、腕を伸ばす際に迷っていたことは、肩の使い方でした。肩は脱力するのか?それとも、胸を開くようにして肩は下げるのか? 肩を下げた場合、肩回りに力が入るので楽じゃないしこれは間違いなのか? など、何が正解なのかわからず登っていたというのが実状でしたが、最近、やっとこの件について自分なりの答えができてきました。

この記事では、腕を伸ばすをどのように使いこなすのが良いのかについて現時点での私の結論をまとめたいと思います。

※スラブやマントルムーブの場面を除く

ライター:諦めない男 つるぎ

結論

下記の場面では【腕を伸ばす】が有効ではないと思っています。

  • 高い強度のムーブを起こす時
  • ランジムーブでホールドを止める時
  • 腕を伸ばしているとバランスが取りにくい位置にスタンスがある時
  • ホールドを保持した後、振られが予想される時

また、

  • 胸を開いて肩を下げる場面
  • 肩を脱力する場面

の使い分けも必要です。

それぞれ解説していきます。

高い強度のムーブを起こす時

腕が伸び切った状態で高い強度のムーブを起こすと、関節を支える筋肉や靭帯に大きな負担がかかります。筋肉は、関節を曲げる方向に働くとき最も力を発揮します。逆に腕を伸ばしきると、筋肉は伸びた状態になり、力が発揮できず、弱い状態になります。その状態で強い負荷を受けると、筋肉を痛めやすくなります。

レストなどで休む場面で脱力して腕を伸ばすことは有効ですが、高い強度で力を発揮する場面では腕が曲がっていることが、ダメージを受けずに登って行く上で重要になります。

ランジムーブでホールドを止める時

ランジムーブでホールドを保持する時、状況によっては全体重プラスアルファの衝撃が片手にかかります。この時、腕が伸び切った状態だった場合、高い強度のムーブを起こす時以上に、筋肉や靭帯に大きな負荷がかかり、故障のリスクが高まります。

ギリギリ届いた場面で保持して耐えることは危険ですので、スタンスを別で検討するとか、どうしてもスタンスが無い場合は、ダブルダイノにして両手で保持するなど、負荷をできるだけ分散できるよう検討することが重要です。

腕を伸ばしているとバランスが取りにくい位置にスタンスがある時

クライミングを始めたばかりのころ、自分が下手だからバランスが取れないのだと思い込んでいました。実際、バランスの取り方に問題があったケースもあったと思いますが、腕を伸ばした状態でずっと登り続けるのは基本的に無理です。

手で保持するホールドとスタンスの位置によって、重心の移動には限界がありますので、状況に応じて手を曲げたり、足を曲げたりしてバランスを取る必要が出てきます。力で抑え込んで無理やり手を伸ばすということもできますが、それは本末転倒です。

また、垂壁などでスタンスにしっかりと体重を落とせる場面であれば、腕を曲げて引き付けた方が腕や手の負担が軽減する場面もありますので、状況に応じて使い分けるという認識でOKです。

ホールドを保持した後、振られが予想される時

横や斜め横方向のホールドを取りに行った後、 そのホールドを支点にしたとき、 手を伸ばしている分だけ体が大きく振られてしまいます。肘を曲げるなど、出来るだけコンパクトにすることで振られる力も小さくなります。

また、振られる際、状況によってはその振られを耐える状況も想像できます。その際、腕が伸び切っていると、筋肉や靭帯に大きな負担がかかり、故障のリスクが高まります。距離がギリギリの場合は、少し勢いをつけて距離を稼ぎ、腕を曲げた状態で保持するなど、工夫してみて下さい。

胸を開いて肩を下げる場面

腕を伸ばしてムーブを起こす場合の体の使い方としては、「胸を開いて肩を下げる」が正解です。このような使い方を普段の登りでしていない場合、しんどく感じるかもしれません。しかし、それはその筋力が普段から使えていないからという認識をして下さい。

胸を開いて肩を下げた状態は体が力を発揮する上で重要な要素です。この姿勢が取れていることで、手・腕・肩の他に背中や胸などの大きな筋肉を連動させて使うことができるようになるため、保持力・持久力を発揮した登りが出来るようになります。

その姿勢がきついと感じる場合でも、筋トレだと思って続けていくことで、いずれ必要な金力がついて大きな力を発揮してくれるようになります。

登る動作をする時の基本姿勢だと認識して取り組んでもらえればと思います。

肩を脱力する場面

脱力して肩が上がった状態が有効な場面は、基本的にはレスト時になります。肩の力も出来るだけ抜いてリラックスする場合に有効です。他には低負荷のムーブであれば問題はないと思いますが、脱力して肩が上がっている状態は、背中や胸などの筋肉との連動が切れている状態になります。この状態で大きな力を発揮すると、腕・肩に負荷が集中して故障のリスクが高まりますので、その認識を持って使い分けてもらえればと思います。

まとめ

腕を伸ばす事が有効ではない場面4つ紹介しました。

  • 高い強度のムーブを起こす時
  • ランジムーブでホールドを止める時
  • 腕を伸ばしているとバランスが取りにくい位置にスタンスがある時
  • ホールドを保持した後、振られが予想される時

また、肩を脱力して良い場面はレストのみで、「胸を開いて肩を下げるを基本姿勢として登ることで、力を発揮した登りが出来る。

胸を開いて肩を下げる姿勢がしんどい場合は、意識してその姿勢を維持した登りを続けることで、保持力・持久力を発揮した登りができるようになる。

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