クライミングで成長するために、いろいろとメニューを考え、実践して、効果を確認する、そんな活動をしてきました。どんな練習をすれば効果的に能力が向上するのか? この観点から可能性を感じるメニューを企画、実践してきました。
自分自身をコーチングしている感覚がなかった頃は、先輩クライマーの方に上達方法をよく聞いたりしていました。そんな時によく言われるのが、とにかく本数を登る事が大事とか、強度の高いルートに挑戦することで強くなっていくなど、今考えるとそれぞれの方向に対する回答としては間違っていないのですが、体系的ではない内容が多かったように思います。
数年前からクライミングのサブトレーニングの位置づけでロードバイクを始めました。自転車でのトレーニング理論を学び、実践した結果、高強度も中強度も低強度もそれぞれに意味があり、競技の特性に合せてそれぞれの能力を上げて行く必要があると理解しました。
この記事では、低強度・長時間の登りに取り組んで、逆に弱くなった失敗体験を踏まえて、壁を登るトレーニングを行う際のメニューにはどんな取り組みが適しているのか、現時点でのクライミングのコーチング方針を書いていきます。
ライター:諦めない男 つるぎ
結論
実際に壁を登る練習については低強度での長時間メニューは不要という結論に達しました。低強度、長時間で伸ばせる能力はありますし、クライマーとして成長していく上で必要なものだと思いますが、それはRUNや自転車などの有酸素運動に適した種目で活動するほうが適しているとの結論に至りました。
壁を登る活動では、限界強度以上の刺激を入れて最大筋力を向上させるトレーニングと、パフォーマンスを発揮したい時間の2~3倍までで、中強度以上での持久力トレーニング、大きくはこのどちらかを狙ったメニューにバランス良く取り組んでいくことが限界突破に繋がると考えています。
上記結論に達した理由
クライミングのサブトレとして始めたロードバイクに取り組むなかで、自転車でのトレーニング理論を学びました。それらは、クライミングに水平展開すれば効果が見込めると感じるものも多くあります。
ロードバイクのトレーニングに低強度で長時間走り続けるというものがあります。LSDトレーニングと言われるもので、最大心拍数の60~70%ぐらい(走りながら会話できるレベルの強度)で淡々と一定ペースで走り続け、最低2時間、できれば4時間以上と言われています。
LSDとは、
Long Slow Distance(ロング・スロー・ディスタンス)の略称で「長く、ゆっくり、距離を走る」トレーニングの事です。
このトレーニングの主な効果は、
- 持久力向上
- 毛細血管の発達
- 脂肪燃焼
- 全身の血流がよくなり回復促進
とされています。
ロードバイクの場合、ペダルを廻し続ける能力やその精度を高める事、姿勢を維持するための体幹が必要となるので、持久力向上という効果に期待することも納得できます。毛細血管の発達については正直なところ、確認できないのでなんとも言えません。脂肪燃焼効果については、減量でその効果を体験済みなので、間違いないと思っています。全身の血流がよくなって回復が促進するというのも一定の効果はあると感じています。
以前このトレーニングを、クライミングに水平展開してメニューを考えて実践してみたことがありました。低強度で16.5mある人口壁を、登って降りての往復を3回から4回、1日2~3セットするという内容でした。
通常新しい取り組みを評価する場合、最低でも2~3ヶ月は続けた後、結果を確認するようにしていますが、この取り組みだけは2週間ほどで切り上げました。
理由は、明らかに弱くなっているのを実感したからでした。クライミング力が低下した一番の原因は、筋力の低下だと感じました。弱い強度を長く続けることで、体がその強度に順応してしまった、そんな感覚を持ちました。また、毛細血管の発達が実際に起こると仮定しても、RUNや自転車など、他の運動の方が適していると感じました。
まとめ
クライミングで体系的に成長していくためには、ざっくり下記3種類の強度をターゲットにしたメニューをこなしていく必要がある。
- 高強度のトレーニング
- 中強度のトレーニング
- 低強度のトレーニング
このうち、高強度と中強度については壁を登る活動で向上させていくことが効果的ですが、低強度については活動の特性上適していないため、RUNや自転車など他の有酸素運動が適した種目で取り組む方が効果的。
高強度のトレーニング
自分のフルパワーを発揮してもギリギリ突破できないルートや課題に取り組むことがこれに当たります。負荷が掛かる時間は短くてもよいですが、できれば、インターバルを管理して休みすぎないように時間を管理して取り組むと効果的です。
トレーニングの主目的は、最大筋力の向上です。
中強度のトレーニング
目標とするパフォーマンスを発揮する時間、例えば目標のコンペが6分なのであれば、その2倍~3倍の12分から18分までの時間をターゲットにしてあまり負荷を抜かないように登ります。設定したトレーニング時間がギリギリ登り切れないぐらいの難易度のルートや課題で行うことが効果的です。こちらもインターバルを管理して休みすぎないように取り組むと効果的です。
トレーニングの主目的は、持久力・回復力の向上です。
低強度のトレーニング
RUNや自転車などで、最大心拍数の60~70%程度(しゃべりながら走れる強度)で1時間以上、週3回以上を目安に取り組むと良いです。なお、毛細血管の発達を主目的にする場合の取り組み時間は、最低2時間以上と言われています。プロのサイクリストなどは8時間以上走ることがザラにあるそうです。
トレーニングの主目的は、
毛細血管の発達、脂肪燃焼(体重コントロール)、全身の血流がよくなり回復促進です。
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