手を使うスポーツなどで、力を発揮するには小指が大事だという話を良く聞きます。例えば、剣道では小指側から竹刀を握れと教えられましたが、実感としては何故大事なのか? 小指側で握ることでどんな効果があるのか? その当時はあまり実感がなく、教わったから意識していただけでした。
ある時、クライミングにとっても重要な要素になるのでは?と考え、取り入れて実践してみると、意外と早く効果を実感することができました。小指側で保持する事は、身体能力を活かして、キネティックチェーンを発揮する要素の1つであると感じました。
この記事では私がキネティックチェーンを発揮するために意識している8つの要点のうち、【小指側で保持する】について書いていきます。
※この内容はガストンやプッシュ等のムーブでは活用できません、その前提で読み進めて下さい。
ライター:諦めない男 つるぎ
小指側で保持する
クライミング中、小指や薬指での保持は出来るだけ全てのホールドに対して行えているのが良いと思っています。特に、支持手側のムーブの起こし始め、腕での引き付けやロックする時など、手に大きな負荷が伝わる瞬間は小指側で保持しておきたいところです。
小指側で保持することで肩甲骨を介して体幹と連動した保持が出来るようになります。体幹から背中・胸・肩・腕に関連する大きな筋肉をたくさん利用できるため、大きな保持力・持久力を発揮できるようになります。
また、その保持状態からムーブを起こせば、体幹を軸として体全体を連動させたムーブができますので、力強くいろいろなムーブに対応しやすくなります。
私自身、以前は小指側ではなく、人差し指側に強く力を込める保持をしていました。肩から先で保持している感覚で、練習で追い込むと人差し指、中指、肩を痛めることがよくありましたが、小指側で保持する意識をもって登り始めてから、慣れとともに少しづつ変化が感じられ、今では肩や指の負担は激減し、練習で追い込んだ時に出る疲労感は、背筋や殿筋・腰回りに変っていきました。
小指側で保持する 5つのポイント
小指側で保持する際に意識するべき5つのポイントについて解説します。
胸を開いて背筋を伸ばす
胸を開いて背筋を伸ばすことで肩甲骨周りの筋肉が連動するようになり、肩甲骨や体幹の力を利用できるようになります。そして、体幹も安定します。
ホールドを持つ場所
ホールドの形状や重心位置によっても持つ場所はかわりますので一概には言えませんが、可能な範囲で、右手はホールドの右端、左手はホールドの左端を持つようにします。目的は小指の端面を壁やホールドに出来るだけ接地する事と、小指側の手の平をホールドに密着させる事です。
また、ホールドの外側を巻き込んで(ラップ持ちに近いホールディング)持てるケースもありますので、体幹の力を多く使った力強いムーブを起こすことができます。
小指の外側面を使う意識
小指の外側面を壁やホールドに出来るだけ接触させ、摩擦力を高めて保持力を向上させます。また、ホールドにひっかける箇所がある場合は関節の溝を押し当てたり巻き込んだりするイメージで持つとホールディングの安定感が増します。(画像の黄色〇部分参照)
手の平を密着させる
ホールドの形状によって出来ない場合もありますが、可能な限り小指側の手の平をホールドに密着させて小指と挟み込むようにホールディングすることで保持力と安定性を高めることができます。指の隙間は空かないように意識しましょう。(画像の緑色〇部分参照)
親指の保持について
親指は小指とホールドを挟むイメージで添えます。親指は強く押し込むのではなく、保持を安定させるイメージで小指側に向かって軽く挟むように保持します。
小指側で持つ感覚と感じた変化、そのイメージ
それまで小指側で持っていなかった人にとっては、持ち方が本当に正しいのかわかり辛いと感じるかもしれませんので、私が持ち方を変えて感じたことや、ガバホールドを例に持ち方のイメージをお伝えしたいと思います。
小指側で持ちはじめた時に感じた事
上の写真は私が小指側で持ち始めた時に疲れがでた部分を示したものです。これは最初のうちだけでしたが、それまでの持ち方で疲れを感じる位置とは明らかな変化がありました。
また、小指側で持った場合は、青のラインを意識してホールドを保持するようになりました。このラインは肩甲骨の方へ繋がっていると感じることができます。逆に人差し指側に力を入れて持った場合は、この青いラインとは逆サイドの外側に力の流れを多く感じ、肩で力のラインが途切れてしまう感覚になります。
実際の持ち方例
小指の外側の側面をできるだけ壁やホールドに密着させることでフリクションが高まります。その結果、安定して保持し易くなります。他の指は小指に寄せて隙間が開かないように肘をへそのほうへ絞るようにホールディングします。
親指は、第1関節を小指の方向へ押しつけるようなイメージでホールドに当てます。この時、できれば親指の第2関節は立てて、第1関節は伸ばすことでより体幹への連動性が高まります。そして、小指側の手の平を出来るだけホールドに密着させることで保持力と安定感が増します。
ホールドが小さくなった場合でも出来るだけ上記のポイントとなる部分を意識して同じようなイメージで持ちます。
最初は難しいと感じるかもしれませんが、練習することで徐々に馴染んで出来るようになります。
まとめ
キネティックチェーンの発動要点② 小指側で保持する
【小指側で保持する】を活用する状況はどちらかというと動の場面になります。小指側で保持して、肩甲骨や体幹と連動出来ていない状態で高い負荷がかかるムーブを起こした場合は、大きなダメージを受けてしまうイメージを持っています。
小指側で保持する場面
- 次のホールドを取りに行くムーブの起こし始め
- 引き付ける場面
- 腕をロックして耐える場面
小指側で保持することで期待できる効果
- 体幹の力を連動させて使うことができる
- 保持力・持久力を発揮できる
- 指の関節にかかる負担を軽減する
- 肩にかかる負担を軽減する
小指側で保持する ポイントまとめ
- 姿勢(胸を開く、背筋を伸ばす)
- ホールドを持つ場所は、右手は右端、左手は左端が保持力を発揮しやすい
- 小指の外側面を壁やホールドに出来るだけ接触させて保持する
- 小指側の手の平をホールドに出来るだけ密着させて保持する
- 親指は小指とホールドを挟むイメージでホールディングする
- ホールディングしたら肘をへその方へ絞るように保持する
注意点
- ガストンやプッシュ等のムーブは適用外
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