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【まとめ記事】クライミングで身体能力を最大限発揮する方法 ~キネティックチェーン発動要点 8選~

強いクライマーが登っているのを見て、保持力や上半身のパワー、体幹の強さばかりに目がいって、そのパワー感の自分との違いに圧倒される経験を何度もしました。

自分が5.11台を必死に登っていた頃、5.13を登るクライマーは同じ人間とは思えないと感じました。身体能力がまったくの別物なんだろうなと思っていました。しかし、実際に自分が5.13を登れるようになって思った事は、当時持った印象とはかなり違い、身体能力が発揮できる姿勢や体の使い方、楽に登る技術とその引き出しの多さ、このあたりが格段に進化したという感覚を強く持ちました。

もちろん、フィジカル的な成長はしていると思います。しかし、それだけでは5.13は絶対に登れないと言い切れます。過去の自分が登っている動画を見ていると、当時の自分に今の自分がどれだけ身体の力を有効に使いながら楽に登っているかを熱弁したくなる程です。

また、体の使い方や楽に登る技術を頭で理解したからといって、すぐに出来るようになるものではありません。少なくとも自分はそうでした。内なる感覚と、実際の身体の動きとの差異を修正する事や、使えていない神経を呼び覚ますこと、力が発揮できる姿勢や動作を感覚的に覚えていくことなど、それらを身に付けるためには長い時間と練習が必要でした。

この記事では、私が身体能力を効率よく発揮して登るために重要だと感じて、意識している8つのことについて書いていきます。スポーツ科学では、キネティックチェーン(運動連鎖)と呼ばれる概念です。

キネティックチェーンとは、骨、関節、筋肉、神経など、体全体を連動して動作させることを指します。 全身を一つの連結したシステムとして捉えることが重要です。体の各部位が連動することで、より大きな力を発揮することができるため、身体能力を最大限発揮して登るための必須要素となります。

ライター:諦めない男 つるぎ

結論

クライミングにおいて身体能力を発揮して登るということは、体幹や股関節の力を手足の先端まで連動させられるように、全身の筋肉や関節をフル活用した運動にどれだけコントロール出来るかだと思っています。

ポイントは、出来るだけたくさんの筋肉を連動させることになります。これにより、大きな力や持久力を発揮できるようになります。また、負荷を多くの筋肉や関節で分散することになりますので、怪我のリスクも減り、回復も早まります。この効果はクライミングで継続的な成長を続ける上で最も重要なことだと思っています。

以下は、私が身体能力を発揮して登るための要点だと感じて、意識している8つの内容になります。

  1. 支持手にへそを向ける
  2. 小指側で保持する
  3. 体幹へ連動する親指の使い方
  4. 肘を曲げて保持する
  5. 肘とへそを近づける
  6. 肩を下げる
  7. 姿勢を維持する
  8. 両足でとらえる・決める

支持手にへそを向ける

支持手とは、次のホールドを取りにいく際に、支点となる手のことです。その支持手にへそを向けることで、体幹から指先まで連動した保持ができるようになります。

ある程度登れる方であれば自然と出来ていると思いますが、特に意識したい場面は、限界ギリギリの状態の時や、高強度の課題などで保持に安定感のない場面などです。不安定感や恐怖心から意識がその方向へ持っていかれて、無意識に体の正面を向けてしまいます。

そうならないように、追い込まれた状況こそ、一番力が発揮できる動作を心がける意識が重要だと思っています。

支持手にへそを向けるについては下記の記事で詳しく書いていますので、興味のある方はご覧下さい。

 

小指側で保持する

大きな保持力や持久力を発揮するために肩甲骨を連動させた動作をするためには、ホールドの保持の仕方が重要になってきます。ガストンムーブ以外では、人差し指側に力をいれている場合、肩から先での保持になりやすく、小指側で内側に絞るように保持すれば肩甲骨を連動させやすい保持になります。

肩甲骨が連動すれば、体幹とも連動しやすくなりますので、より大きな保持力や持久力を発揮することができるようになります。

小指側で保持するについては、下記の記事で詳しく書いていますので、興味のある方はご覧下さい。

 

体幹へ連動する親指の使い方

親指の使い方もとても重要な要素だとわかってきました。第2関節を立てた状態で保持していると肩甲骨と連動しやすく、体幹の力を使ったムーブが可能になります。また、ピンチ持ちの場合も第2関節の状態が力を発揮できるかどうかに大きく影響します。

私はピンチ持ちに苦手意識がありました。親指の保持の仕方で、保持力が大きく変わることを実感してから、苦手意識は無くなりました。ちょっとしたことですが、大きな違いになりますので、苦手意識をもっている方は、是非試してみて欲しい内容です。

体幹へ連動する親指の使い方については、以下の記事で詳しく書いていますので、興味のある方はご覧下さい。

 

肘を曲げて保持する

肘を伸ばすことばかり意識してきましたが、肩甲骨~体幹を連動させるためには肘を曲げている必要があると気が付きました。伸ばし切った状態では肩甲骨への連動がしにくくなります。大きな力を発揮する場面で肘が曲がっていることが大事なポイントになります。

また、ランジなど次のホールドを取ったあとに大きな負荷がかかる場面で、肘や肩関節を伸ばし切った状態で保持してしまうと、大きな負荷を肘や肩でダイレクトに受けることになってしまい、故障のリスクが高まります。できれば肘は90度ぐらいに曲げて、肩甲骨が連動できる状態、肘も伸びる状態でランジ後のホールドを保持することで、衝撃を分散させることが出来、押さえ込む力も発揮することが出来ます。

肘を曲げて保持するについては、下記の記事で詳しく書いていますので、興味のある方はご覧下さい。

 

肘とへそを近づける

前提として、肘とへそを近づける動作は、正体や測体登りで有効です。ガストン的なムーブには当てはまりません。

肘とへそがお互い引き寄せられるような感覚で保持します。実際は保持手もへそへ向かって引いてるのかもしれませんが、私の感覚的には、保持した手は固定して、へそを保持手に近づけていくイメージが近いと思っています。

へそを近づけていくということは、下半身の力で腰を上げていくことになりますので、大殿筋やハムストリングスなどの疲労度が上がります。キネティックチェーンが機能し出すと、これまでとは疲れ方、疲れる部位があきらかに変わってきます。

肘とへそを近づけるについては、下記の記事で詳しく書いていますので、興味のある方はご覧下さい。

 

肩を下げる

リラックスして登れている時は、自然と肩は下がっていますが、リキんだり、フルパワーを出すような場面では無意識の内に上がってしまうことが多いのではないでしょうか?

力を発揮したい思いとは裏腹に、体の至るところに不要な力が入ってしまいます。肩が上がってしまうと、肩甲骨への連動が切断されてしまい、力が発揮できない状態になります。力を発揮したい時こそ、肩を出来るだけ下げてムーブを起こす意識をもつことで、うまく切り抜けられる場面が増えていくと思います。

その他、肩が上がるというよりも頭が前下方向へ落ちてきてしまい、結果的に肩が上がったような姿勢になっている場合もあると思います。背筋を伸ばして、ツムジを天に向ける意識も重要だと思います。

肩を下げるについては、下記の記事で詳しく書いていますので、興味のある方はご覧下さい。

 

姿勢を維持する

登れる姿勢の維持を実践するためには、その姿勢を体得することが第一になります。生活習慣病のストレートネック、巻肩、猫背、肩こり、腰痛など、登れる姿勢を獲得することでこれらの問題も一緒に解決できてしまいます。

私の場合、この姿勢を体得して実際にクライミングで実践できるようになるまでは、かなりの時間がかかりました。長年積み重なって当たり前になった姿勢を修正することは大変なことですので、気長に取り組んでいくしかないと思います。

時間はかかるし大変ですが、この姿勢がとれるようになるメリットはとても大きいです。姿勢を維持したクライミングができるようになれば、保持力・持久力・回復力の向上に加えて怪我のリスクも減るため、継続的に成長するために、とても大事な内容です。

姿勢を維持するについては、下記に詳しい記事を書いていますので、興味のある方はご覧下さい。

登る基礎技術、姿勢を維持する ~キネティックチェーン発動要点⑦~
持久力を発揮して登っていくためには、クライミング中、力を入れる場面や高い負荷がかかるタイミングで、全身が連動できる姿勢が取れている事が大原則となります。大きな筋肉を連動させられる姿勢を取って、核心部で力を発揮したり、ダメージを分散させる、この意識が完登するためにとても重要です。 限界グレードの突破口-クライミングの現状を打開する-【クライミング×ロードバイク】

骨盤を立てる ~キネティックチェーン発動要点⑦捕捉~
クライミング中のバランスを取る場面や、大きな力を発揮する場面では、骨盤が立っている事が重要なポイントの1つになります。骨盤が寝ている状態では自ずと猫背になり、全体のバランスを取るために首は前に出てストレートネック状態になり、お尻は壁から離れてしまう姿勢になってしまい、保持手に大きな負荷がかかってしまいます。更に、このような状態では体幹と連動した力強い動作が出来なくなってしまいます。クライミングをしている時、骨盤は基本的には立っています。ですので、どんな場面で寝やすいのかを理解して、力を発揮したい場面で骨盤が立つようにムーブを組み立てる戦略が大切だと考えています。限界グレードの突破口【クライミング×ロードバイク】

 

両足でとらえる・決める

体全体の力を発揮するためには、両足がしっかりと地に着いていることが重要になります。片足だけでバランスを取ったムーブを選択する方が良い場面もあると思いますが、基本的に片足だけのムーブの場合、タイミング重視の動作となり、力強さは出せません。

左右のスタンス位置が、これから起こすムーブのバランスが取れる位置であることと、全身の連動がしやすいように両足が壁をとらえていることは、身体能力を発揮して力強いムーブを起こすために必要な要素となります。

以前は両足を決めている暇があったら、次のホールドへ向けての動作に早く移りたいという気持ちが強かったのですが、両足でとらえること、決めることで保持力や持久力が発揮できると体感できてからは、両足のスタンス位置にも神経を使えるようになってきました。

両足でとらえる・きめるについては、下記の記事で詳しく書いていますので、興味のある方はご覧下さい。

 

まとめ

クライミングでキネティックチェーンを活かした登りが出来ていないクライマーであれば、かなりの伸びしろがあると思います。それほど、体を有効に使って登ることは大きな効果を発揮します。

キネティックチェーンを活かして登れるようになってくると、持久力や回復力が向上したり、強い保持力を発揮出来るようになったり、体の疲労感が出る部分が変ったりなど、それまでとは明らかな変化が感じられると思います。

体全体で負荷を分散するので、疲労も局所的にたまりにくくなります。回復も早くなるので、たくさん登れるようになり、成長速度の向上にも期待が持てます。

これほど良いことづくめのテーマですが、実践で使いこなすのはなかなかに難しいです。それまで繰り返し行ってきた体の使い方や動作を修正することは本当にたいへんです。私の場合、明らかな効果が感じられるまでに1年以上かかりました。しかし、長い時間かかっても、正しく取り組めば報われるテーマだと思いますので、是非取り組んでみて下さい。

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