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登る基礎技術、肩を下げる ~キネティックチェーン発動要点⑥~

クライミング中に、「スタンスに体重をしっかり乗せられていない」「上半身のパワーだけで登ってしまっている」と感じる、そんな経験はありませんか? 

その原因は、肩や腕の力だけで押さえこんでしまい、体全体を連動させたムーブができていないのかもしれません。

自身の身体能力を活かして、キネティックチェーンを発揮しながら登っていくためには、8つの押さえるべき要点があると私の経験からまとめました。これらの要点を押さた登り方に変えていった結果、高いパフォーマンスを維持した登りが出来るようになりました。

この記事ではその要点の1つ、【肩を下げる】について書いていきます。

キネティックチェーンとは、骨、関節、筋肉、神経など、体全体を連動して動作させることを指します。 全身を一つの連結したシステムとして捉えることが重要です。体の各部位が連動することで、より大きな力を発揮することができるため、身体能力を最大限発揮して登るための必須要素となります。

ライター:諦めない男 つるぎ

肩を下げる

肩が下がった状態で登ることは、手・腕・肩が肩甲骨や体幹と連動する事に直結しています。肩に力が入って上がっている状態では、体重の大半を手・腕で支えることになってしまうため、本来発揮できるはずの保持力や持久力が発揮できません。

よくあるのが、恐怖や緊張感からリキんでしまって、肩が上がった状態でムーブを起こす場面です。肩が上がった状態では肩甲骨や体幹と連動ができませんので、手や腕の力だけで押さえ込むことになってしまい力を出せません。

また、体幹や肩甲骨と連動できずに強度の高いムーブを繰り返ししてしまうと、思っている以上に疲れてしまったり、怪我に繋がるダメージが溜まっていきます。結果、核心部で力が出ない、たくさん登れない、持久力が発揮できない、怪我をしてしばらくクライミングができない、などの原因に繋がります。

肩を下げてホールドを操作することを常態化させることで、背中や胸なども含めた大きな筋肉を連動させたムーブが常に起こせるようになります。時間はかかると思いますが、繰り返し練習することで徐々にその効果の大きさを実感できるようになっていくと思います。

肩を下げる 2つのポイント

胸を開く、背筋を伸ばす

肩を下げるには肩甲骨を下げる必要があります。猫背などの状態で姿勢が悪いと肩甲骨の動きに制限がかかるので、下げたい位置まで肩を下げることができません。胸を開いて背筋を伸ばし、肩甲骨が自由に動ける姿勢を維持することが重要です。

首周りの力を抜く

肩を下げるには首周りのリキみを取ってリラックスしている必要があります。ストレートネックや首がリキんで前に出てしまっている場合、首周りの筋肉が緊張して肩の動作に制限がかかってしまいます。

耳の位置を肩の上に来るようにあごを引いたり、頭のつむじ(てっぺん)を天からひっぱられているようなイメージで姿勢を整え、リラックスすることで肩も目的の位置まで下げることができるようになります。

肩を上げた状態でホールドを保持した場合の対処方 4選

クライミングしていると、肩を上げた状態でないと次のホールドに届かない場面が出てきます。その場合の対処方法について解説します。

胸を開く、背筋を伸ばす

肩が上がった状態で次のホールドを保持した場合、猫背気味でうつむいた姿勢になっているケースが多いです。ですので、再度意識して胸を開き、背筋を伸ばします。肩甲骨や体幹と完全に連動出来るところまでは至らないと思いますが、多少連動させることはできます。また、うつむかず、顎を上げて上を見る動作も有効ですので状況によって使ってみてください。

保持したホールド側にへそを向ける

支持手にへそを向けることで肩甲骨や体幹と連動しやすくなります。こちらも状況によっては有効な場面があります。

支持手にへそを向けるについては別記事で詳しく解説しています。こちらもご覧ください。

支持手にへそを向ける ~キネティックチェーン 発動要点①~

一気にスタンスを上げる

上半身はホールドを保持した状態で、下半身の蹴る力と腹筋の力で一気に上のスタンスへ足を引き上げるというテクニックがあります。これにより肩が下がった状態で保持できる位置まで一瞬でスタンスを上げる事ができます。

この時、保持手にはほとんど負担はかかりません。ジャンプにも似ていますが、どちらかというと両足のスタンスを蹴って一瞬無重力状態を作り、その間に両足の太ももを引き上げながら膝も深く曲げます。足を曲げたことで稼いだ距離で高い位置にあるスタンスに一気に乗り込むイメージです。

〇 メリット
  • 効率的に登ることができる
  • 保持力を温存できる
  • 足上げが難しいスタンスにも楽に足を上げることができる
● デメリット
  • ある程度の瞬発的な筋力が必要
  • タイミングが重要
  • 失敗すると修正できない可能性がある

ダメージを受けないムーブを選択する

いろいろな状況があるので全てのケースを解説することはできませんが、押さえておきたい点は、ホールドを保持した後、肩が上がった状態の保持手に大きな負荷が掛かることを出来るだけ回避するということです。

例えば、保持手と肩甲骨を連動させる動作をした後で負荷のかかるムーブを起こすのか、それが出来ない場合は、肩が上がった保持手に負荷がかからないムーブを選択するなどが考えられます。

肩を下げた時の3つの効果

体幹が安定する

肩が下がると、肩甲骨が力を発揮できる位置に戻り、背中の筋肉が使えるようになります。これにより、体幹が安定し、体全体を効率的に使うことができるようになります。

体幹の力が伝わりやすくなる

肩が下がると、手・腕・肩・背中・胸・体幹が連動して動くようになり、効率的にホールドに力が伝わります。

怪我のリスクが減る

肩が上がった状態だと、肩周辺の筋肉に負担がかかり、怪我のリスクが高まります。肩を下げることで、多くの筋肉と連動できるので、負担も分担でき、軽減することができます。

まとめ

肩を下げる ~キネティックチェーン発動要点⑥~

【肩を下げる】この状態を常に維持することは、完登を達成するために重要なポイントになります。肩が上がってしまった状態は、肩甲骨や体幹との連動が切れてしまい、保持力・持久力を発揮できなくなりますし、怪我のリスクも高まります。クライミングする中での要点の1つとなります。

肩を下げる ポイントまとめ

  • 胸を開く、背筋を伸ばす
  • 首周りの力を抜く
  • 肩を上げた状態でホールドを保持する場面は必ずあるので対処方法を考える
    ・胸を開く、背筋を伸ばす
    ・保持したホールド側にへそを向ける
    ・一気にスタンスを上げる
    ・ダメージを受けないムーブを選択する

肩を下げた時の効果 まとめ

  • 体幹が安定して、体幹からの力が伝わりやすくなる
  • 保持力・持久力が発揮できる
  • 怪我のリスクが減る

 

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