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ホールドを保持する時に考える事 ~当たり前を疑う vol.1~

クライミングではホールドを保持する場面の連続です。深く考えるのは、トライしている課題で行き詰まった時や、核心部をもっと楽に通過するためにホールドの持ち方を研究する時ぐらいで、問題なく通過できたところのホールドについては、あまり深く考えられていない事に最近気付きました。

ホールドが持ち易いのを良いことに、雑に保持して力でバランスを取るクライミングが定着してしまうと、高グレードの課題では通用しません。トライで登る時はもちろんですが、ウォームアップやクールダウンで登る場合でも、1手1手最適な保持を追求して経験値を積み上げていければ、成長にも繋がりますし、やさしい課題を登る際でも、より感覚を研ぎ澄ました、楽しいクライミングになるのではないかと思います。

この記事では、クライミングを続けて行く中で、何度も訪れる【保持する】という場面、1つ1つの保持に対して考えるべき事について書いていきます。

ライター:諦めない男 つるぎ

 

結論

ほとんどのクライマーは、ホールドを保持することを一番に考えてしまい決定した保持の仕方から繰り出せるムーブを探している事が多いです。そのため、その持ち方が一番保持力を発揮できると思い込んでしまい、最適なムーブに、なかなか行き付けなかったりします。

最適な保持の仕方を考える順序は次の3ステップです。

  1. 進む方向から、ムーブを起こした時の重心の流れと、ホールドを利かせる方向をイメージする
  2. 次のホールドまでの距離と重心の流れから、保持の仕方をイメージする
  3. ホールドの形状を加味して最適な保持の仕方を具体的に考える

具体的に考える中で、親指はどこにおくのか、すべての指を上面に乗せるのか、人差し指だけを横面に引っかけるのかなど、最後まで無理のないムーブにするための細かな保持の仕方の違いは、シチュエーションによって無数に存在します。ムーブを最後まで無理なく成功させるためには、次のホールドを保持するまでの間、重心移動がスムーズに行える保持になっている事が重要です。

最適な保持の仕方を考える順序 3ステップについて、1つ状況を例に書いていきます。

  

Step1 : 進む方向から、ムーブを起こした時の重心の流れと、ホールドを利かせる方向をイメージする

重心の位置はへその位置と定義して、画像の状況を例に、次のホールドまでの距離が遠い場合を想定して書いていきます。

進方向は左上です。

重心の流れは、黄色矢印のように左足に乗り込みながら半円を描くように左上へと移動する、支持手となる右手の、ホールドを利かせる方向は、重心が移動する予定の範囲を全てカバーできるように、右足のスタンスホールドの方向へ最も利かせられるように保持する、そんなイメージをしたとします。

左手は重心に向かって利かせられる保持の仕方になっていますし、進む方向への推進力も比較的作りやすい向きなので、そのままの方向に利かせた保持をイメージします。

 

Step2 : 次のホールドまでの距離と重心の流れから、保持の仕方をイメージする

この状況で一番距離の出る保持の仕方は2時から8時の方向に利かせるサイド持ちです。ただ、最初からサイド持ちにしていると重心が上がるまでの間、利かせる事ができず、無理矢理なムーブになってしまいます。

ですので、ムーブの途中からサイド持ちへの移行を狙います。具体的なイメージとしては、重心が上がっていったタイミングで親指がホールドの上部に来るように事前に準備してコントロールすれば、左足に重心が乗ったタイミングでサイド持ちに移行しやすくなり、距離を出す事ができます。

ここで重要なポイントは、次の3点を理解していて、それ達成するためのムーブにトライする事です。

  • 次のホールドに届かすにはサイド持ちをする必要がある事
  • 動き出す前の重心位置では、サイド持ちはまったく利かない事
  • イメージした重心移動が出来た場合、ムーブの途中からサイド持ちが利いて安定する事

左手は、右手の引き付け動作をギリギリまで補助したいので、親指を下から当てるのではなく、カチ持ちが有効です。

 

Step3 : ホールドの形状を加味して最適な保持の仕方を具体的に考える

step1と2でイメージしたムーブを成功させるために、起点となる保持手は右手です。ですので、特に右手がイメージ通りのムーブを起こした時に、実際に次のホールドに到達できる保持の仕方が出来る事が重要になります。

実際にホールドの細部を手探りで確認します。利かせるために使えそうな微妙な凹凸、途中からサイド持ちに移行出来そうかなど、イメージしたムーブが出来そうなホールディングポイントを探します。

ホールディングする場所が決まったら、最終の微調整を行います。指や手の平を、どのように引っ掛けたりフィットさせるのか、ギリギリの状況ではほんの少しの凹凸の使い方がムーブの成否を分けます。悪い状況であればあるほど、最後の微調整を繊細に行う意識は重要だと思っています。

  

まとめ

クライマーは、ホールドの保持の仕方に意識が行きがちですが、クライミングで重要なことは、その次のホールドに到達する為の保持の仕方です。先を見据えた上で保持の仕方を考える習慣が身に付けば、更に登れるようになるはずです。

この記事では、最適な保持の仕方を考える順序として次の3ステップを上げました。

  1. 進む方向から、ムーブを起こした時の重心の流れと、ホールドを利かせる方向をイメージする
  2. 次のホールドまでの距離と重心の流れから、保持の仕方をイメージする
  3. ホールドの形状を加味して最適な保持の仕方を具体的に考える

これらは、実際の登りの中では数秒で判断して、すぐ実行することになります。今回の内容では、考え方の1例として、1つのムーブに対する保持の仕方・考え方を取り上げましたが、状況によっては、複数の案が考えられる場面もあります。

イメージを複数持っていれば、実際に現場でホールドを探ったり、その場のバランス感を感じた時に、瞬時に成功の確率が高そうなムーブ・保持の仕方に切り替えることが出来ます。

この引き出しを増やす取り組みとしては、自分だけでの取り組みでは限界がありますので、他のクライマーの登りを見て自分にはないイメージをもらったり、そのムーブや保持の仕方にトライ・練習してみるなどして、自分のものにしていくのが近道だと思います。

また、この能力が高まればオブザベーション能力の向上に直結します。全体のイメージが持てていないと、先を見据えた登りを1本通して行うことは難しいからです。オブザベが得意ではないクライマーは多い印象ですが、諦めずに続けていけば必ず進歩しますので、諦めずに頑張りましょう!

 

この記事の内容は、以前取り上げた、重心をコントロールして登る基本的な内容が理解出来ていることを前提に書いています。体の中心に向かってホールドを利かせる場合の重心のコントロールについてまとめました。興味のある方はこちらもご覧ください。

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