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「やさしい所はゆっくりと、難しい所は素早く登る」 その言葉の真意

クライミングを始めて1年ぐらい経った時に、「やさしいところはゆっくりと、難しいところは早く登る」と教えられたことがありました。その時は、長い時間悪いホールドを持つとダメージを受けるという意味だと捉えていました。

しかし、実際にそのような意識で登ってみても、悪いホールドで早く登ることは出来なかったので、ほんの少しでも早くする意識が大事なのだという意味合いで解釈していました。

それから10年以上クライミングを続けてきた今、この言葉の真意を考えると、様々な場面で教訓となる言葉だったんだと感じられるようになっていました。

この記事では、「やさしい所はゆっくりと、難しい所は早く登る」 その言葉の真の意味だと思うところについて書いていきます。特に、より難しい課題を完登するためには必須の考え方だと思います。

ライター:諦めない男 つるぎ

 

結論

クライミングにおいて、「やさしいところはゆっくりと、難しいところは素早く登る」という教えがあります。一見矛盾しているように見えるこの教えには、課題を完登するための奥深い意味が含まれています。
 

やさしい所はゆっくりと登る

やさしい所をゆっくりと登る理由は、主に2つあります。こちらの内容は、ほとんどのクライマーが想像通りだと思います。
 

筋肉の疲労を溜めない登り方

ゆっくり登ることで、筋肉への負担を軽くして、疲労を溜め込まないようにすることができます。その結果、体力が温存出来て、核心部でパフォーマンスを発揮できる状態を維持する事に繋がります。
 

心拍数を無駄に上げない

急激な登りによって心拍数を上げると、体力の消耗が早まったり、酸素不足になる可能性があります。心拍数の上昇を出来るだけ抑えて、ゆっくりと一定のペースで登ることは、核心部でパフォーマンスを発揮することに繋がります。
 

難しい所は素早く登る

難しい所を素早く登る理由は、主に3つあります。
  

フルパワーの時間を短くする

難しいセクションでは、体力と集中力が削られます。出来るだけ素早く登ることで、大きな力を発揮する時間を短かくしてダメージを最小限に留めます

また、悪いホールドを保持する時間を出来るだけ短くする作戦もあります。例えば、悪いホールドを保持する前に足を先に送っておいたり、重心移動しながら悪いホールドを保持してすぐに次のムーブを起こすなどです。重心が壁に近づく際に発生する力を利用することで、静止している時よりもフリクションを高めることができます。

以前、その内容をテーマにした記事を書いていますので、興味のある方はご覧ください。


  

素早い動作でしかバランスが取れない

バランスが取りにくい場面では、素早く動くことでバランスが取れるケースがあります。例えば、動作速度を上げることで、重心移動の力やフリクション力が上がります。それによってバランスが取れるようになるケースや、重心が動き続ける事でしか取れないバランスもあります。難しい課題になってくるとそのような場面は多々あります
 

物理的にバランスが取れない

代表的なのがコーディネーション系のムーブです。コーディネーション系の課題では、途中で止まることはできません。ムーブのスタートとゴールでしかバランスが取れないので、どのように発射して、どのように間を繋いで、どのような体勢でバランス良く着地するのか、そのムーブのイメージが持てる事イメージ通り素早く体が動くかが要点になります。
 
 

まとめ

やさしい所とは、

  • 長時間静止して居続けられる
  • ムーブ動作をゆっくり起こしても、体への負担が変わらない
  • ムーブ動作の途中にバランスが取れて楽な瞬間がある

難しい所とは、

  • 体への負担が大きく、長い時間耐えることが出来ない
  • 素早いムーブ動作でしかバランスが取れない
  • 物理的にバランスが取れない

クライミングでは基本的に右手と左手、右足と左足をだいたい交互に動かして登っていくことが多いです。保持していたホールドを離して次のホールドを取りに行くまでの間クリップ動作をしている間加重していたスタンスから足を離して次のスタンスを捉えるまでの間、これらの隙間時間は部分的なレスト時間になっています。

やさしい所でも難しい所でも関係なしに、1秒にも満たない素早い動作で、次のホールドを取ったり乗せたりを続けていけば、自ら回復時間を縮めていることになります。それがずっと続くわけですから、リードクライミングのように持久力を発揮しないといけない課題ではその積み重ねがボディブローのように効いてきます。

ですので、「やさしい所はゆっくりと登る真意は、筋肉的な疲労を出来るだけ溜めない事や、心拍を無駄に上げて体力の消耗を早めたり、酸素不足にならないように無理のないペースで登って、後に控える難しいセクションで力を発揮できるように備える事だと解釈できます。

また、「難しい所は素早く登る真意は、単純にフルパワーを出す時間を出来るだけ短くするという意味もありますが、それに加えて、早く動く事でしかバランスが取れないセクションや、ムーブの途中に物理的にバランスが取れない区間があるなどの場面が想像できます。

難しい課題では、素早い動作が出来ないとムーブを最後まで耐え切れない、もしくは、耐えられたとしても体力を大きく削られてしまう場面も多々あるため、これらも踏まえた教訓なんだと解釈できます。

とはいえ、素早い動作でのムーブに慣れていないと、怖くて出来ない思います。勇気を出して練習して、成功体験を積むことで、素早い動作の有効性を体で覚えていくことが重要だと思います。

 

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