クライミングの持久力を上げるために、みなさんはどんな練習メニューを取り入れていますか?
私はリードクライミングを始めてから約1年半ぐらいまでは、毎回完登を目指した登りをしていました。同じルートに挑み続けて、楽に登れるムーブと有効なレスト方法を追求して自動化することで限界グレードを上げる、その繰り返しでした。
5.11dがオンサイト出来るようなるところまではそのやり方でグレードを上げて行くことができましたが、5.12aオンサイトがなかなか出来ず、2年間足踏み状態が続いていました。
原因は持久力不足でした。そして、それまでと同じ取り組みを続けても持久力が上がっていく感覚を感じられない状態でした。ある時、先輩クライマーの方に持久力を上げるためにどんなトレーニングをしてきたのか尋ねたところ、登って降りてまた登る持久力トレーニングのことを教えていただきました。
そこから約2ヶ月、その持久力トレーニングに取り組んだ結果、念願の5.12aのオンサイトを達成することができました。トレーニングメニューが的を得ていれば、能力はまだまだ伸ばすことができると実感しました。
この記事では、持久力・回復力を上げるための持久力トレーニングの方法をご紹介したいと思います。持久力・回復力は、リードはもちろんですが、ボルダリングにとっても必要な要素です。
ライター:諦めない男 つるぎ
持久力トレーニングの内容
リード壁を使います。リードクライミングで登って行き、ゴールのホールドを両手で保持してバランスを取ります。そして、終了点のクリップをせずに登ってきたルートのホールドのみを使ってクリップを外しながらスタートホールドまでクライムダウンしていきます。
登って降りる間、レストはしないことを目標にします。無理な場合は最低限の1シェイク・2シェイクまでにします。スタートホールドまで降りてきた時、地面に足は付きません。
スタート付近のホールドを使ってレストをします。ある程度戻ったら2本目を登り始めます。この時のレスト時間も短くしていくことで回復力アップに繋がりますが、2本目が勝負できるレベルに戻さないと2本目の登りが練習になりませんので、そのへんのバランスも考えて取り組んでみてください。2本目はレストを適度に行いながら完登を目標に登って行きます。
この練習で使うルートについては、1回目の登り降りで使うルートと、2回目登っていくルートは違う方が良いです。そして、スタート位置が近くのルートが望ましいです。
グレードについては、1回目で使うルートはレストをしながらであればフォールせずに登って降りてが達成できるけど、レストなしでは厳しいルートを選択してください。2回目登るルートはオンサイトの限界グレード以上を目標にして下さい。
登って降りてまた登るを1セットとして、1日2~3セット行います。セット間の休憩時間も少しづつ短くしていくことで回復力向上に繋がります。これを週2回以上行うことで2カ月後ぐらいには明らかな効果が実感できると思います。
要領がわかって慣れてくるまでは、更に下のグレードから始めてみることをお勧めします。可能であればトップロープでも構いません。トップロープで速度を上げて登ることで心肺も追い込むことができますので、更に高い効果が期待できると思います。
1回目のルートを休まずに登り降りすることが出来て、2回目のルートもトップアウトすることが出来れば、次の課題を設定して取り組みます。
要点
- 1本目の登り・降りは出来るだけ早く行い、レストはしない
- クライムダウンは登ってきたルートのホールド限定で行う
- クリップを外しながらクライムダウンを行う
- 1本目の往復では落ちないグレードのルートを選択する
- 1本目、2本目ともに登り方がわかっているルートを選択する
- 1本目の往復で疲れた状態から回復させて2本目を登り切る
- テンションはしない、限界まで出し切ることを目標に登る
- 全体通して8割程度完遂できるグレードやルートの強度で行う
- 2~3セット/日 、週2日以上を目標に実施する
要点の補足
- 登り・降りの速度は強度になります。速度によって強度調整ができます。
- この練習では、降りる際が一番しんどいと思います。普段の登りと同様に通過できない場所はムーブを考えて解決するよう取り組んで下さい。基本的には登った手順と逆の手順が一番楽なムーブになることが多いです。
- クリップを外す作業は疲れてくるとなかなか外れなかったりします。また、クリップ解除するタイミングを間違えると危険な状況になる可能性がありますので、慣れてない時期は特に注意してください。今落ちたらどうなるのか、想像してからクリップ解除してください。
- 1本目の登り・降りは、持久力を鍛えることに繋がります。落ちてしまうとそこで負荷が逃げてしまいますので、持久力トレーニングになりません。ここでは筋肉を休ませないイメージでレストも出来るだけしないようにやり切ってください。
- 登り方がわかっているルートを選ぶ理由としては、ムーブに迷いがあると限界まで追い込みきれないからです。乳酸が溜まってきて、もう限界に近い状況でもムーブが決まっていると、全身全霊でそのムーブを繰り出す集中力が生まれます。これが大事なポイントだと思っています。とにかく、限界を超えて絞り出す!この意識で取り組んで下さい。声を出すと勇気が湧いて集中力が上がるのでおススメです。
- 1本目の往復が終わった後、出来るだけ回復させて2本目の完登を目指します。ここからは持久力よりも回復力がターゲットになります。
- テンションせず、絞り出す気持ちでムーブを起こして勝負するようにしてください。最初は取れなかった1手が取れるようになってきます。
- あまりにも出来なさすぎる場合は持久力トレーニングになりませんので、グレードを落とすなど調整して下さい。あせらず、徐々に上げていくように取り組んで下さい。
- トレーニング強度が低すぎると効果はでません。トレーニング強度の調整はルートのグレード、登り降りする速さ、セット間の休憩時間の短縮などで適切に行ってください。
注意点
- クライムダウン時のクリップ解除はクライマーの頭より上の位置で行う
※クリップ解除のタイミングによっては、落下距離が長くなるので注意が必要。特に下部のクリップ解除は危険が伴うので、次のルートに共用できるのであれば下部のクリップ解除はせずにスタートホールドまで降りた方が安全も確保できるのでおススメです。 - 施設によっては禁止になっているところもあるかもしれないので、スタッフに確認してから行う
- クリップ解除するとロープのたるみが大くなる場面があるのでビレイヤーにもその認識をもってもらい、常に適切な長さに調整する対応を取ってもらう必要あり
取り組み方のコツなど
登って降りて登る、これを1本のルートとして捉えて、普段のレッドポイントを目指す取り組みのように打ち込めば、楽しみながらトライ出来ると思います。
このトレーニングでの最高グレード達成が、私にとっては、これまでのどのルートよりも達成感があり嬉しかったことを覚えています。
また、持久力がつかないと完登できませんので、成長度合いが解りやすいのもモチベーション維持に繋がりました。
登って降りる、ここまではレストをせず、出来るだけ早く登り降りするという不合理なクライミングですが、その不合理な刺激を入れることで肉体が成長していきます。何のための練習かを強く意識して取り組むことで成果も上がると思います。
まとめ
普段の完登を目指す登りは、いかに効率的に登るかを追求します。一方、持久力トレーニングでは、筋肉を追い込み、持久的限界を超える負荷をかけることで、超回復を促し、より強靭な身体へと進化させていくことが目的です。
何のためにこの取り組みをしているのかを理解して、頑張るべきポイントで出し切れるよう強い意志で取り組んで下さい。要点を押さえて続けることが良い結果に繋がります。
こんなこと出来るわけがないと思うかもしれませんが、本気で取り組めば出来てしまうもんです。本当に持久力を上げたいという気持ちがあるのならば、トライしてみる価値はあると思います。 最初は無理せず徐々に強度を上げていくことが大事です。
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