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肩甲骨の柔軟性からクライミングの状況が変わり始める理由

数年前まで肩から先が腕だと思っていました。

あるときYouTubeでクライミング日本代表の楢崎選手が、肩甲骨からが腕という意識で登っていると発言しているのを聞いてビックリしたのを覚えています。

その時は肩甲骨や背中を使ってクライミングをしてる意識はなかったので、これに取り組めば限界突破に繋がるかもしれないと思い、立甲に挑戦することを決断しました。

立甲とは肩甲骨を肋骨から剥がし、肩甲骨を羽のように立たせた状態の事です。肩甲骨と腕を連動させるためには立甲がある程度できる柔軟性が必須です。

結論から言うと、立甲は正しい方法を理解して継続的に練習すれば、基本的には誰でもできるようになるそうです。運動不足や姿勢の悪さなどの影響で肩甲骨周りが硬くなり、可動域が制限されている人は多いです。そのため、立甲を行うためには、まず肩甲骨周りの筋肉をほぐし、柔軟性を高めることが必要です。

立甲がある程度出来るようになってくれば、次の目標は背中の筋肉も生かした登りに変えていくことです。背中の筋肉が連動して使えるようになれば持久力・保持力・回復力が向上します。肩甲骨が柔軟に動くようになって、大きな筋肉を連動して使えるようになれば、クライミングにおける限界突破に大きく貢献してくれると断言します。

左の写真
合わせ鏡を使って肩甲骨の動きを確認しながら1日10分程度を約3カ月続けた結果、ここまで立甲できるようになりました。半信半疑で取り組んでいたので自分でもびっくりしました。

ライター:諦めない男 つるぎ

立甲の取り組み方

私の場合、立甲の練習方法は本で学んで実践しました。ポイントは肩甲骨が立つ感覚をつかむ事です。最初はほとんど反応がないので、今やってることがあってるのか・間違っているのか判断がつかず迷いの日々でした。

それで導入したのが100円均一のプラスチック製の鏡2枚でした。

思い立ったらすぐ四つん這いになって立甲の練習が出来るように、肩甲骨がよく見える位置に合わせ鏡の要領で部屋に固定配置しました。どのように体を操作すれば肩甲骨が立つかを鏡でチェックし、立った時の感覚を思い出しながら繰り返し練習しました。

立甲の要点

  • 頭からお尻までまっすぐになるように四つん這いになる
  • 腕と足が地面から90度になるようにポジションをとる
  • 腕を伸ばしながら上腕の力こぶを全面に押しだすように脇を絞る
  • 正しくできていればこの時肘は後方へ向いている
  • 手から肩甲骨までを固定した状態で、鎖骨の辺りを意識して中心を地面へ押し込む
  • 地面に手を着く時は、大きくパーをした状態から親指を人差し指側に押しつけ、両手ともに写真の赤丸部分を地面に押しつけるように四つん這いの姿勢を取る


肩甲骨が少しでも立つ感覚がつかめたら、今度は片手を身体の中心へ寄せて1本でもバランスの取れる位置へ置き、逆の手は腰の上に置き、片手づつ30秒程度肩甲骨剥がしのストレッチをしたり、両手をついた状態で上下左右へ揺らしたりして柔軟性を上げていきました。

最初のうちは両手の指が外側を向くように地面に着いた方が肩甲骨は立ちやすかったです。

注意点としては、肩甲骨の癒着を剥がそうとするあまり、力を入れ過ぎて手首などを痛め易いので、焦らず少しづつ剥がして行くイメージで取り組んで下さい。少しづつ、少しづつ、羽が大きくなっていくと思います。

このような感じで、毎日10~15分程度継続していくうちに徐々に肩甲骨の浮き上がり方が大きくなっていき、約3ヶ月でそこそこの立甲ができるまでになりました。

立甲するために参考になりそうな動画があったので2本貼り付けておきます。

肩甲骨を連動させたホールドの保持・操作

握るようにホールドを保持・操作していると小さな筋肉ばかり使うことになり、すぐ前腕がパンプしてしまいます。肩から先が腕だという意識で登っていると、肩から前腕の筋肉しか使えていない状態になり、これも身体の力を最大限発揮できない登りになります。

この状態で強度の高い保持を必要とするムーブを繰り返し行った場合、肩や人差し指・中指に負荷が集中して故障のリスクが高まります。この登り方をしている人はとても多い印象です。

肩甲骨を連動させたホールドの保持・操作ができるようになれば、腕と肩に加えて胸や背中周りの筋肉も連動させることに繋がります。その結果、保持力・持久力・回復力は大きく向上します。

肩甲骨を連動させるコツとしては下記のようなイメージを持っています。

〇 共通事項

身体能力を発揮する姿勢(首が背骨上にある、胸を開いている、骨盤が立っている)

・壁に出来るだけ近い位置で登る


・肘を出来るだけ曲げた状態で保持する



〇 ガストン以外のムーブを起こす時の流れ(例)

1. 小指・薬指側でホールドを保持する

2. 親指はIP関節を寝かして、MP関節を立てて保持する


3. 次のホールドが届く適切な位置にスタンスを上げて決める


4. 支持手の方へ身体の正面を向けて、へそ方向へ引っ掛けるように保持する


5. へそを支持手に近づけていくイメージで高度を上げて次のホールドを取りにいく


6. 支持腕は身体の側面に密着して、肘は90度以上に曲がり背中よりも後ろへ出ている状態


現代人はパソコンやスマホを習慣的に使うことが多く、画面に熱中するあまり猫背やストレートネックになり易いです。

肩を動かす機会も少ないため、肩甲骨周りの筋肉が固まってしまい、本来自由に動くはずの肩甲骨が癒着して動きが制限されている人がほとんどです。ですので、背中周りや胸の筋肉を連動させるためには、癒着を剥がしたり、筋肉の柔軟性も必要になってきます。

私の場合、立甲が出来るようになってから、肩甲骨を連動させた登りが出来るようになるまで2~3年ぐらいかかりました。

肩甲骨の柔軟性があること、柔軟性を生かした登り方が出来ている事、この2つが揃って初めて威力を発揮します。

まとめ

・肩甲骨まわりの柔軟性を高めて立甲を目指す
・肩甲骨周りの筋肉が連動できる登り方を覚える
・ポイントは、登る時の姿勢・ポジション・身体の使い方・保持の仕方など
・この登りが出来るようになればクライミング力は格段に向上する
・これまでと違う身体の使い方になるのでマスターするのに数年かかる意識で取り組む

強度の高いムーブを起こした時に複数の大きな筋肉を連動できれば、受けるダメージも複数の筋肉で分散できるので、それぞれが受けるダメージが小さくて済みます。そのため、1登のトライでの持久力・回復力が上がりますし、1日通してこれまで以上にたくさん登り込めるようになります。

これを長期スパンで継続して使い方をマスターできれば、これまでに体験したことのないレベルの成長につながると思っています。肩甲骨周りの筋肉をこれまで使っていなかった方が使いこなせるようになるまでには時間が掛かると思いますが。逆に言えば伸び代がそれだけあるという事になります。みなさんも是非取り組んでもらえたらと思います。

 

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