身体能力を最大限発揮するためには、姿勢が重要であることを、数年前に登りの中で実感しました。それ以降、パフォーマンスが発揮できる姿勢や、その姿勢を維持する方法について自分なりに意識して研究し続けてきました。
しかし、このことを頭で理解していても、それまでの生活習慣で身に付いてしまった悪い癖は、そう簡単に治るものではなく、姿勢を維持し続けることができず、力が発揮できない状態でムーブを起こしてしまっていると気付くこともありました。
この記事では、パフォーマンスが発揮できる姿勢を維持する要点や、姿勢を維持するために私が意識して取り組んでいることについて書いていきます。
ライター:諦めない男 つるぎ
結論
姿勢は身体能力を最大限発揮するためのベースになります。
パフォーマンスが発揮できる姿勢を維持するための要点は次の2つです。
- 頭の角度や位置を維持すること
- 姿勢が崩れやすい場面で、崩さないこと
それぞれ詳しく書いていきます。
頭の角度や位置を維持すること
パフォーマンスが発揮できる姿勢を維持するために最も重要なのは、頭のポジションです。頭が適切な角度で正しい位置にあれば、悪い姿勢を取ることが逆に難しくなります。
下の図は、いろいろな姿勢のイメージです。首の骨の角度に注目して見てください。正しい姿勢のみ首の骨が真っ直ぐ立っているのがわかると思います。
頭の角度や位置で、首や背骨のライン形状は変化していきます。ですので、姿勢が崩れてパフォーマンスが発揮できなくなる主な要因は頭の位置と言っても過言ではありません。
姿勢が崩れやすい場面で、崩さないこと
頭の角度や位置を維持して登っていても、いつのまにか崩れていることがあります。クライミングでは慣れない体勢でムーブをくりだしたり、悪すぎるホールドやスタンスに意識がいきすぎて、無意識のうちに崩れていることがあります。
例えば、日常生活において姿勢が崩れやすいタイミングは、座る・拾う・顔を洗うなど、かがむ動作に関わる時だと自分自身や他の人を観察していて気が付きました。
悪い姿勢が習慣になっている人は、かがむ動作をする時に、まず頭から動き出します。肩の上にあった頭が前方へスライドして、背骨の真上からずれることで、首や背骨のライン形状が変化して上半身全体の姿勢が崩れてしまいます。
図でいうと、猫背やスウェイバックの状態になっている人が多いです。
頭の重さは、よくボーリングのボールに例えられます。テッペンにある重いものが位置を変えるわけですから、それ以下の体のパーツは形を変えて対応しなければバランスがとれなくなってしまいます。
一方、正しい姿勢を維持してかがむ動作をする場合、曲がるのは股関節と膝です。お尻を後ろに突きだすと同時に膝を曲げるイメージで、頭の位置は変らず動きません。レスリングの選手が試合中にとっている姿勢がまさにそれです。
この時、膝の曲げ方が少ないと太ももの後ろ側の筋肉(ハムストリングス)がストレッチした時のように伸びを感じられます。
日常生活の中の何気ない動作ででる癖は、クライミング中にも当然起こっています。あるムーブを起こそうとしたとき、なぜか力が入らない、バランスがとれないと感じる場面などでは、この問題が原因である可能性も疑ってみてください。
パフォーマンスを継続して発揮するための取り組み
ここまでの事を踏まえて、クライミングでパフォーマンスを発揮するための姿勢を維持するために私が取り組んでいるテーマは次の2つです。
- 正しい姿勢を体で覚えていること
- 無理なく正しい姿勢が維持できること
それぞれ詳しく書いていきます。
正しい姿勢を体で覚えていること
目指すべき姿勢の基準が解りにくく、私自身、感覚がつかめない時期が長らくありました。特に骨盤を立たせる際の角度の感覚がつかめず、整体の先生に相談したところ、ストレッチポールに頭から尾骶骨が乗るように仰向けに寝て、腰とストレッチポールの間に隙間がない姿勢を体で覚えると良いとのことだったので背中のメンテナンスもかねてストレッチポールを使い始めました。
私の場合、まっすぐになっていると思っていた姿勢は、反り過ぎていることが解りました。(ストレッチポールと腰の間に隙間がありました)それ以降、クライミングの後や寝る前などに利用して、姿勢の感覚をつかんでいきました。
ストレッチポールを購入される場合はお尻から肩まで乗るように、必ず90cm以上のものを選んでください。
私はコスパ重視のものを購入して使っています。他に、値段は少しはりますが人気のLPNストレッチポールはジムなどでも採用されているようです。あと、使う時に安定感のあるハーフ型も最近は人気があるようです。参考までに一通りリンク張っておきます。
パフォーマンスを発揮するための姿勢については下記の記事でもっと詳しく書いていますので、興味があればこちらもご覧ください。
無理なく正しい姿勢が維持できること
正しい姿勢を頑張って続けないといけない状況であれば維持するのは難しいです。意識しなくても維持できる状態になっていることが大事なのですが、できていないクライマーが多いのも実情です。
改善するためには、状況に応じて、次のような問題を解決する必要があります。
- 筋力不足
- 柔軟性不足
- 生活習慣
- 精神的ストレス
それぞれ、詳しく書いていきます。
筋力不足
正しい姿勢を維持するためには、特に体幹を支える筋力が必要になります。クライミングでは指先や腕の力にばかり意識がいき勝ちですが、姿勢を維持する筋力を上げることは保持力の向上・安定にも大きく貢献します。
正しい姿勢で登りこめば姿勢を維持するための筋力も養われます。重点的に高めたい場合は体幹トレーニングを取り入れても良いと思いますが、どのようなトレーニングをする場合でも正しい姿勢で行って、その姿勢を維持するための筋力も鍛えているという意識を持つがことが大事です。
柔軟性不足
クライミングで様々なムーブを正しい姿勢で起こすためには、主に股関節、肩回り、体幹、足首の柔軟性が重要です。柔軟性の度合は実行しようとするムーブで求められる体の使い方によって変わってきますが、クライミングをする上で最低限の柔軟性は必須になります。
また、クライマーによって多様するムーブがあると思いますが、身体やそれぞれのパーツの長さ以外では、主要な部分の柔軟性が、得意・不得意を決める主な要素になっています。
良く使うムーブがどんどんと磨かれて、苦手ムーブがいつまでたっても苦手なのは、その登り方をすることでムーブの柔軟性を維持・向上できているからです。逆をいえば、成功しなくても苦手なムーブに何度もトライすることは、そのムーブに必要な柔軟性を高める取り組みをしているともいえます。
ムーブの成功・失敗にばかりフォーカスせず、柔軟性を高めるためのメニューだと割り切って気長にトライを続けることで、そのムーブに必要な柔軟性が上がってきて成功に少しづつですが近づいていくはずです。
もちろん、部分的に柔軟性を高める為にストレッチを続けることも有効です。どちらにしても、柔軟性を高めることには時間がかかります。気長に行うこと・継続することが重要です。
生活習慣
正しい姿勢を維持する妨げとなる大きな要因の1つに生活習慣があります。日常生活のなかで猫背やストレートネックなどに代表する崩れた姿勢で普段過ごしているのであれば、その姿勢はクライミングをしている時にもでています。
他にも、寝具が硬すぎる・柔らかすぎる・まくらの高さや形状があっていないとか、靴の形状があってないなどで正しい姿勢がとりにくい状態になってしまっているケースも多いようです。
私の場合、ベッドのマットレスについては、その当時通っていた整体の先生が柔らかいマットレスは腰痛になり易いと言っていたので、いろいろと検討した結果、現在のマットレスの上に敷いて使えるエアウィーブのマッドレスパッドにしました。本当はもっと上のグレードのものが欲しかったのですが、お財布事情から下のものに落ち着きました。
硬さが適度にあり寝心地もよく、起きた時に出ていた腰の痛みがほぼなくなり、結果的に満足のいく買い物になりました。
あと、起きた時に首が痛い問題があったのですが、長らく対処しない日々が続いていました。ある時、職場の取引先の方が同じ悩みを改善したとのことで、トゥルースリーパーのセブンスピローを絶賛していたので、その話に乗って購入してみました。
結果、使用した翌日の朝から驚くべき効果で、昨日まで出ていた首の痛みが嘘のように止まりました。人によって合う合わないはあると思いますが、自分にもこれがあっていたようです。
それから、靴については土踏まずをサポートしてくれる中敷きに変えるだけで改善することもあります。私の場合はロードバイクで膝痛に悩んだ時期がありましたが、下のものに変えてから明らかな痛みの改善に加えて、ペダリングに力を込めやすくなったことを実感し、中敷きだけでこんなに変わるもんなんだと驚きました。
悪い生活習慣を長く続けていると、クライミング中にパフォーマンスが発揮できないのはもちろんですが、首・肩・腰などに慢性的な痛みが出たり、偏頭痛や手足がしびれる等の症状に繋がったりもします。ここまでいくとかなり辛い状態になり、自力で治すことは難しいので治療を受けて治すなど大きな出費と時間が取られてしまいます。
私自身は、椎間板ヘルニア、ストレートネックから首痛や偏頭痛、慢性的な腰痛、肩こり、左右の肩の高さがかなり違う、膝痛などの問題に悩まされた時期がありましたが、現在では全て改善しています。
普段の姿勢を改善する取り組みは、クライミングのパフォーマンス向上に加えて、健康のためにもなりますので、そのままで放置してしまっているのであれば、これを機にできるだけ早く自分にあった方法を検討して対処することをおすすめします。
精神的ストレス
見落とし勝ちなのが、ストレスです。会社や私生活での人間関係のストレスもそうですが、アスリートの場合は成果を求めるあまりストイックになり過ぎて、気付かないうちに大きなストレスを自分にかけ続けているなんてことも多いと思います。
ストレスを常に感じていると、常に交感神経優位の状況になり、脱力ができなくなって、疲労が抜けない、夜寝られない、体調が悪いなどの状態が続きます。
そうなってくると、姿勢を維持するための筋力の低下や、筋肉の柔軟性が失われるので、例えば、肩が前にひっぱられて巻肩になって猫背になったり、首まわりの筋肉が硬直して痛みの症状がでるなど、正しい姿勢を取ることが難しくなってしまいます。
強いストレスがかかり続ける状況が続くと、心身ともに大変なことになっていきますので、自分でストレスをかけてしまっている場合は、とにかく脱力すること、リラックスする時間を意識して作ることが重要です。
外から受けるストレスについては、ストレスを受ける環境から離れる努力をするなど問題を取り除くことが重要です。
まとめ
クライミングで特に大きな力を発揮するタイミングでは正しい姿勢がとれていることが大事なポイントになります。崩れた姿勢で力を発揮しようとしてしまうと、力が出し切れないことに加えて、大きなダメージを負うことにもなります。
登っていて、急に力が出なくなると感じる時は、その直前に崩れた姿勢でムーブを起こしてしまったことが可能性の1つに考えられます。
とはいえ、クライミングは様々な状況の中でムーブを起こしますので、気付かないうちに姿勢が崩れてしまうことは多々あります。これを改善するためには意識しなくても正しい姿勢がとれるような状態を作っておくこと以外にありません。
そのために、日常生活の無意識下でも正しい姿勢が取れている状態を目指す必要があると感じています。
- 姿勢が崩れ出すきっかけは頭であることを意識
- かがむ動作をするときには、股関節と膝を曲げる
この2点に意識して日常生活を送れば、少しづつ慣れていくことができると思います。
また、他の人がかがむ動作をする時にも、自然と出来る人か、出来ていない人か、注意を払うことで更に強い意識き付けにつながります。
現代病の代名詞となったストレートネック(頭が前に出ている状態)は体全体の姿勢を悪くして、様々な体の不調を引き起こす原因ですので、この改善活動の意味や効果はとても大きいと感じています。出来ていない方は是非取り組んでみてください。
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